東京支店 (仮称)西新宿五丁目北地区防災街区整備事業に係る施設建築物(A棟)等新築工事作業所

未来につなぐ当社初の大規模風力発電所建設工事未来につなぐ当社初の大規模風力発電所建設工事

本社からほど近い西新宿五丁目北地区に、超高層ビルを新築し、公園などを整備する再開発プロジェクトが進行中だ。店舗やカフェ、オフィス、高級賃貸住宅を備えるビルを建設する作業所を訪ねた。

Photographs by Seiya Kawamoto

西新宿5丁目の魅力と防災性を高める
プロジェクトに参画

 世界最多の乗降客数を誇る新宿駅から北西約1.2㎞、青梅街道を進むとガラスカーテンウォールが印象的な真新しい超高層ビルが見えてくる。「(仮称)西新宿五丁目北地区防災街区整備事業に係る施設建築物(A棟)」(以下、A棟)だ。

完成パース(右のビルがA棟)

 青梅街道、十二社(じゅうにそう)通り、神田川に囲まれた一角、東京メトロ丸ノ内線や都営大江戸線の駅にほど近い、交通至便な西新宿五丁目北地区を4区画に分け、老朽化した中層建築物や木造建築を解体して、超高層ビル2棟を新築。併せて公園を整備し、住環境、商環境、防災性の向上を図る再開発プロジェクトが進んでいる。当社・五洋建設共同企業体は、本プロジェクトの事業推進から施工までを担う特定業務代行者であり、当社はそのうち解体工事、A棟新築、外構、親水公園の整備、神田川の護岸工事を担当する(B棟は五洋建設)。

西新宿五丁目北地区の全体像

 街づくりのコンセプトは、「つどい にぎわう せせらぎのある街」。火災危険度の高かった古い街区を再開発して不燃化し、超高層化による空地の確保で、神田川の景観を活かした親水公園や水と緑の潤いある回遊空間を創出する。

 「西新宿エリアは本社もある私たちの膝元であり、近辺には当社施工のビルが数多く所在しています。この地域の高層ビル建築プロジェクトは、当社が絶対手掛けるべき仕事であり、安全・安心に暮らし、快適に働ける都市空間づくりに、全力を注いでいます」と、安富浩之作業所長は力強く語る。


[コラム]発注者の思いを大切に!
歴史ある街、西新宿五丁目北の再開発

 西新宿地域は、江戸の昔、角筈(つのはず)村と呼ばれ、大小の池や滝、熊野神社をはじめとする寺社が点在する江戸西郊の景勝地だった。歌川広重の浮世絵や江戸のガイドブックとも言える『江戸名所図会』にも描かれている。

『江戸名所図会』の挿絵「淀橋水車」(長谷川雪旦画)
江戸時代の光景。画面中央に青梅街道が描かれており、左手に神田川に架かる淀橋が見える。淀橋は今も現場のすぐ近くにある(国立国会図書館デジタルコレクション)

 歴史あるこの街の一角を成す西新宿五丁目北地区は、2002年の都市再生緊急整備地域の指定を受け、新宿副都心に隣接する地域にふさわしい街づくりを進めるため、2006年、同地区有志による西新宿五丁目北地区街づくり研究会を設立した。2008年、事業協力者に住友不動産(株)を選定。2016年の防災街区整備事業組合の設立認可を経て、2019年には権利変換計画が認可され、当社・五洋建設共同企業体が特定業務代行者として、本プロジェクトを担うこととなった。

 建設現場の地面に目を凝らすと、タイルの色が異なる箇所がいくつかある。実は、かつて建っていた旧建築物の跡だけタイルの色を変えて、発注者である組合員に分かるように配慮しているのだ。暮らしていた人たちの思いをさりげなく残しつつ、3月31日の竣工に向け、着々と工事が進んでいる。

黒いタイルが旧建物跡を示す
黒いタイルが旧建物跡を示す

地上からカニクレーンでガラスカーテンウォールを揚重し、納まりよく設置していく

フロントローディングの発想で
徹底した業務効率化を実現する

 A棟は1、2階に店舗が入り、3~17階がオフィス、19~35階が高級賃貸マンションとなる。床の躯体を構築してから、カニクレーンと呼ばれるコンパクトなミニクローラクレーンでガラスカーテンウォールを揚重、設置し、ワンフロアを5日サイクルで施工する。安富所長は今回の施工について、「プレキャスト工法をはじめとするこれまで当社が培ってきたスタンダードな技術を採用しています。その標準的な施工を、いかに安全かつ迅速、効率的に行うか、それを作業所最大のテーマに掲げました」と説明する。

 まずは、緻密な総合仮設計画を立案した。特に知恵を絞ったのが、資材、生コン車、作業員の各導線を完全分離し、限られたヤードを最大限に活かして、効率よく施工できるようにした点だ。資材運搬車両は、東側ゲートから入場し、資材を降ろした後、一方通行で北ゲートに向かう。生コン車は、十二社ゲートから地下に直接入れるよう、搬入用スロープの間口を拡大し、通行の妨げとなる天井部のダクトなどの諸設備は、生コン作業が全て終わってから設置した。さらに、この規模の建物では2基が妥当とされる仮設エレベーターを3基用意し、作業員が遅滞なく持ち場に移動できるようにした。

総合仮設計画。赤矢印が搬入導線、青矢印が生コン導線。仮設エレベーターは3基用意した
総合仮設計画。赤矢印が搬入導線、青矢印が生コン導線。仮設エレベーターは3基用意した

 「エレベーターを1基増設するコストと、最盛期に1000人にも達する作業員の待ち時間とを勘案し、増設の決定を下しました」と安富所長。導線が錯綜しないため、待ち時間の短縮はもちろん、安全性もより一層確保されたという。

 小島武史作業所長は、「何ごとも初動が大事。フロントローディングの発想で最初のプランを構築すれば、施工途中のトラブルや手戻りを回避できます」と強調し、「建築本部デジタルプロダクトセンター(DPC)の協力を得て、山留めや地下の施工ステップ、複雑な形状の鉄骨階段周りの納まりなどについて、BIMによる3D検証を徹底し、入念に手順を確認した上で施工に取り掛かりました」と説明する。

山留め構台・躯体の干渉チェック
山留め構台・躯体の干渉チェック(上)
地下施工ステップ(下)
鉄骨階段周りの区画壁の納まり検証
鉄骨階段周りの区画壁の納まり検証

地下躯体構築では、
安全性と効率性を絶妙に両立

 地下躯体の施工においても、安全を最優先した上で、効率性を重視した。現場の敷地境界からわずか4~5m 、青梅街道直下約5m を東京メトロ丸ノ内線が走っている。その円滑な運行は決して妨げてはならない。山留めによる変位を慎重に計測・管理しつつ、同時にできる限りの短工期を目指したい。極めて慎重に、そして迅速に……そんな二律背反する難題を解決するために作業所が着目したのは、山留め施工の際、土が崩れないよう土圧を制御する切梁の段数だ。小島所長は、「地下2階分、18m掘削する際、通常は3段とする切梁を、何とか2段にできないか、建築本部技術部とともに検討しました。その結果、斜梁やアースアンカーを設置して安全性を確保したまま、土圧を制御する手法を見いだして、段数減を実現。約1カ月の工期短縮につながりました」と話す。

 施工開始と時を同じくしてコロナ禍による人員や資材不足に直面したり、33階建てから35階建てへの大きな設計変更もあったが、短工期につながる諸施策を講じていたため、スケジュールに乱れは生じなかった。

地下1階の柱頭免震

超高層ビル建設の知見をフル活用 
若手社員も頼もしく成長

 同作業所の社員の多くが、同じ超高層ビル建設の現場で働いた経験を持つ。安富・小島両所長は、2018年1月に完成した大崎ガーデンタワー・ガーデンプラザ(西品川一丁目地区第一種市街地再開発事業施設建築物(A街区))の施工をともに担当。作業所を統括する湯山仁史工事長は、その現場の作業所長を務めていた。デザインは異なるものの、A棟も同じ住友不動産ブランドのビルで、外周りのカーテンウォール施工や線路際の立地、地下1階柱頭免震構造を採用していることなど、西品川とほぼ同様の仕様・条件である。入社以来、1年に1棟は手掛けてきたというビル建設のエキスパートである安富所長は、「西品川のビル建設で培った経験をフルに活かすことができている」と言い、小島所長も「前の現場で得た知見をブラッシュアップし、常に進化を心掛けています」と語る。今回の工事では、西品川で高評価を得た、溶接火花の飛散を確実に防ぎ、ネットと違って美観性にも優れた柱型の養生枠を導入しているが、これもより安全性を高めた改良版だ。

>柱型養生枠
柱型養生枠

 「かつて同じ現場で働いてきた若手社員たちの成長も感じています。培った経験、知見が自信や糧となっているのでしょう」と安富所長は目を細める。現場ではエンゲージメント向上に力を注ぎ、若手社員にはなるべく責任ある仕事を任せ、褒めて育てる指導を実践。同時に、所長も中堅も、自身の経験やノウハウを若手社員に分かりやすい言葉で伝え、モチベーションと主体性を養うように心を配っている。安富所長は「若手社員も私たちの期待に応えて、やる気を持って現場に臨んでいます」と語る。

東京支店土木部の支援の下、護岸工事を完了。
工事はラストスパートへ

 A棟の工事は、内装工事の段階に進んでいる。神田川の護岸工事や親水公園の設置も終わり、2023年3月の完成に向け現在、最終段階に入っている。

 護岸工事は、通常、土木の範ちゅうとなる工事だが、今回、発注者の要望もあって同作業所が一括して施工することになった。

 「50mほどの長さの護岸ですが、確実に止水するための技術の指南や、建築では不慣れな管轄自治体、関係各所への申請・審査業務のアドバイスなど、支店土木部技術部技術室の支援で乗り切ることができました。さまざまな部署と力を合わせた経験も、次につながると思います」と安富所長。

 小島所長は、「お客さま、設計監理、作業員、当社、全てがWIN・WIN・WIN・WINの関係で、高品質な建物を引き渡したい」と語り、安富所長は、「安全に効率的に精度高く。当たり前のことを日々着実に行い、最後まで仕事の質を高めながら竣工の日を迎えたい」と、完成間近のA棟を2人で見上げた。

(2022年12月21日取材)

Voice ~現場のために今できることを~

完璧で美しい内装を目指し、精度と工程管理に力を注ぐ

森川将司 工事主任

 住宅住戸内の仕上げを担当しています。最高級の賃貸マンションなので材質も高級で、クロスや壁、天井、床のタイル張りに至る全てにおいて、ミリ単位の納まり精度が求められます。工程管理も私が任されていますが、たった一箇所の遅れがドミノ倒し的に全体の遅延につながるので、先手の対応も重要です。トラブルゼロ、遅延ゼロに向け常に緊張感を持って臨んでいます。

Voice ~現場のために今できることを~

決して妥協することなく一日一日の仕事に全力投球!

関根拓也 工事課長代理

 私にとっては、初めての超高層ビル建設の現場で、工事全般の管理を任されています。「竣工に至る一日一日を大切に、妥協なく仕事をする」ことをモットーに、日々悔いなく現場一丸で取り組めるよう、上司や若手、職長たちととことん話し合い、思いの共有に努めています。未知のことに挑戦し続けながら、工期と職人さんを守るという自分の使命に、日々全力投球です。

工事概要

工事名称 (仮称)西新宿五丁目北地区防災街区整備事業に係る施設建築物(A棟)等新築工事
発注者

西新宿五丁目北地区防災街区整備事業組合(参加組合員:住友不動産(株))

設計・監理 アール・アイ・エー、E.D.L.共同企業体
施工者 当社・五洋建設共同企業体
工期 2019年9月11日~2023年3月31日
建築面積 4,269.25m2
延床面積 90,611.31m2
構造 直接基礎、地下RC造・SRC造、地上S造、B1階柱頭免震構造、一部基礎免震
階数 地下2階・地上35階・塔屋2階
最高高さ 155.06m
所在地 東京都新宿区

※2022月12月現在