大成建設のオープンイノベーション(TOI Lab.)

有識者講演集

続ける力_その2

人口の1割以上が“障がい者”

 そして、私が今日一番言いたかったことがこれです。
今、日本で障がい者と呼ばれる人は何人いるかご存知でしょうか。正式に厚労省が障害者手帳、知的障がい者療育手帳、精神障がい者療育手帳を発行している人数です。
正解は788万人です。身体障がい者が394万、知的障がい者が74万、精神障がい者が320万ですが、これはまだまだ増える一方です。

 また、知的障がい者は、国単位で考えると世界標準の1/4なんですが、これは日本が格別少ないというわけではなくて、判断基準が非常に厳しいため。本来であればこの4倍はいると考えてもいい。そして、もうひとつは発達障害です。どの職場にも7〜10%はいて、現在270万人いると言われています。そう考えると、実に1200万人、全国民の1割がなんらかの障がい者だということになります。

null

 加えて、2020年には認知症患者になる高齢者が600万人以上になると言われています。すると1800万人です。
 2030年には800万人の労働生産人口が減少するというこの人口減少の時代ですよ。ものを作っても売れないし、そもそもつくる人もいなくなろうとしているんです。
 どうしますか、ものすごい危機感を持たなければいけないんじゃないでしょうか。
 2020年、2030年になって慌てても間に合わないんです。

 もうひとつの切り口で言うと、障がい者に使われる国の予算の問題もあります。
戦後の日本は、障がい者は「できない」から、「支える、守る」というスタンスで、施設を作り、授産施設を作り、どんどん予算を使ってきました。自立支援法ができる前、障がい者福祉に使われているお金は1兆円になっていました
。自立支援法ができたことで、これが少しは良くなるかと思っていたら、先日聞いたところ、もうすぐ2兆円に手が届くところまで来ているそうなんです。そのお金は、約20万人の障がい者支援の福祉の人たちのところへ行っている。
 
それでやっていることといえば、クッキーやパンを作って、かわいそうな障がい者が作ってるんから買ってください、という手法です。
だから収入が上がらない。
こうした就労支援で働く障がい者の方の平均月収は約1万4000円ですよ。先日、都内で聞いたのですが、養護学校を卒業して働き始め、初めてもらった給料袋を持って、家族でお祝いしようと開けたら、入っていたのがたったの1000円だったそうです。どう思いますか?
 これは労働搾取以外の何物でもない。完全に虐待ですよ。何もできないんだから1000円でもいいだろう、それでもしょうがない、というのが現在の福祉の当たり前になってしまっている。

障がい者雇用は日本の未来

 いかに障がいのある方を雇用するか。
 これは、一番の多様性に富んだ人材を活用するということでもあります。我々はそんな彼らを使いこなすノウハウがある。
 正社員雇用すれば、健康保険も厚生年金も彼らが50%を負担するし、<発達障害も含め知的障がいのある>324万人のうち、60万人が雇用されていますが、そのほとんどが短時間労働で雇用保険のみです。この半分が正社員雇用されるだけで1千億円近い税金が出てくるうえ、逆に福祉に行っているお金が3千億円くらい浮くことにもなります。
 
 また、170万人もいれば、今人手不足と言われている労働人口が日本人だけで確保できるようになります。
 にも関わらず国では、最初は韓国人から始まり、中国人、最近では東南アジアと外国人の雇用を促進し、国の予算を当てていますが、そのほとんどが自国にお金を持ち帰り、日本で使うことがないそうです。そんなことをしなくても、日本にはまだまだ働ける人がたくさんいるんです。
 
 エフピコには多くの企業の方が見学に来られて、うちでもやりたいと障がい者雇用に本気で取り組んでくれるようになります。最初は5、6人から。確かに最初の半年は苦しい。
ですがしばらく経つとガラッと変わって、すぐに50〜60人に増やしてくれるようになります。
 
また、障がい者を雇用することのもうひとつの良い点は、家族がいるということ。おじいちゃん、おばあちゃん、お父さん、お母さん、そして兄弟。単純計算で1人の障がい者に6倍の人が関わっています。こうした人達が、スーパーで買い物をするとき、障がい者雇用を推進するほうを選ぶのは当たり前のことです。ですから、ここにはものすごいビジネスチャンスもあると私は考えています。
 
 肝は「障がい者でもできる仕事」ではなく、「障がい者だからできる仕事」。

これを切り出せば、障がい者の方にも長くしっかりと働いていただくことができます。分かっていらっしゃる企業は、「できない」という発想ではなく、どういう状況で何ができるのかをきちんと分析し、直接自分たちの本業に関係のあるところで雇用するようになっています。生協では肉の加工、横河電機では商品のデータ処理。某銀行では、新たに開設したデータセンターでデータ管理スタッフとして障がい者の多数雇用をしています。すると彼らも定着し、力を発揮してくれるし、家族も喜ぶ。私達企業も収益性はもちろん、企業ブランドも向上する。三方よしどころか、四方よし、五方、六方よしの仕組みを、まずはみなさんの企業から始めてみてはいかがでしょうか。
 
 日本の戦後教育は、なんらかの障がいを欠陥として排除し、除けるのを良しとしてきました。人に対する思いやりを失い、人のために生きるという考えを失ってしまい、自分さえ良ければよしとする考えが主流になっている気がします。しかし、そこからは何も生まれません。
 エフピコでは、健常者の社員が障がい者の社員とうまく混じり合い、同じ仲間、社員として交流しているので、企業としてのモチベーションが非常に高い。障がい者との付き合い方、障がい者の考え方を理解し、共有しているので、一緒にフロアホッケーという一緒にできるスポーツ大会を開催して楽しんでいます。
 
 どんな企業でも、障がい者の方を正式に雇用して、本業をやってもらえるはずなんです。それを実現する人材教育、多様性活用に、みなさんの企業も取り組んでいただけるとうれしいです。