大成建設のオープンイノベーション(TOI Lab.)

有識者講演集

続ける力

ーレジリエントな企業をつくる「戦力としての障がい者雇用」とはー

経営環境が激動する今、経営者はどのようなマインドを持ち、組織をイノベーションに向かわせていくのでしょうか。
「どうやって障がいのある方を雇用してもらえるかに取り組んで48年」。
「エフピコとの出会いは「千葉に障がい者雇用のための特例子会社を作ってからの約30年」」。
全国60社以上のコンサルティングも務めるエフピコグループ 株式会社ダックス四国(特例子会社)代表取締役社長の且田久雄氏は、障がい者雇用一筋に生きてこられた第一人者です。
障がい者雇用を取り巻く現況とともに、その意義と本質のお話しから、ダイバーシティ&インクルージョンが生み出す経営イノベーションの可能性を探っていきたいと思います。

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且田久雄氏
(かつたひさお)
株式会社ダックス四国
代表取締役

障がい者雇用、その制度的現状

 
  まず親会社であるエフピコについて申し上げると、この会場にいるすべての人がほぼ毎日目にしているものを作っています。それはお弁当の容器やスーパーの食品パックなど、樹脂製の使い捨て容器。シェアは45%を超えており、業界ではよく知られた企業で、創業55年を数えます。
 私はと言えば障がいのある方を雇っていただくためにどうすればいいのかという問題に48年関わっており、昭和62年に千葉県に障がい者雇用の特例子会社であるダックスを創業し、以降、エフピコで障がい者雇用拡大のために活動しています。
 
 今日皆さんに覚えてほしいのは、平成18年に障がい者自立支援法が制定されたことです。平成18年4月から施行。施設を作ってその施設ごとに援助するという従来型の障がい者支援をやめて、障がい者それぞれが自分の利用したい場所を決め利用実績により援助をするという制度です。
これによって、障がい者就労支援施設A・B型、特例子会社などが設立できるようになりました。
 
 また、障がい者雇用促進法では、企業の雇用人数における障がい者の割合を2%以上にすることが定められています。これは短期労働ではなく、常時雇用・雇用保険ベースです。社員100名を超える企業の場合、2%に達しないと1人当たり年間60万円の雇用調整金が徴収され、逆に2%を超えると、1人当たり月額2万7000円、年間で30数万円が企業に支払われるようになっています。
 
 エフピコの場合、平成18年の10月頃、厚労省の事務次官の口添えがあって、A型就労支援施設を作り、重度の障がい者を中心に雇用を始めました。これがとてもうまく回り始めたために、全国でやれ!ということになって、3年の間に全国13カ所で展開し雇用を拡大。現在は全国で19カ所の特例子会社、A型施設を持ち、342名の障がい者の方を雇用しています。障がい者雇用率は約15%。これはある雑誌の調査では、全国1位の数字になっています。
 そしてもうひとつ記憶にとどめてほしいのが、2030年には、精神障がい者がこの雇用率の対象に組み込まれることです。
 現在の精神障がい者の数字から単純に計算すると、各企業は8%の障がい者を雇用しなければならなくなりますが、8%は現実的に難しい。最終的には2.3〜2.4%に落ち着くものと見られています。それでもかなり大変なんですけどね。大きい会社の場合、すでにかなりの障がい者の方を雇用されているとは思いますが、それがさらに増えることになるわけです。これは非常に大変なことです。
 
 では、どうやって障がい者雇用を増やしたら良いのでしょうか。障がい者雇用は、ひとつは自社で雇用するやり方がありますが、特例子会社という方法もあります。就業規定などの問題で自社での雇用が難しい場合に設立する子会社です。障がい者を5人以上雇用し、うち2割が重度障がい者、社全体で3割以上が障がい者でなければならないという制度です。
 
 

「できない」のではない

多くの企業がこの特例子会社を設立し、障がい者を雇用するようになりましたが、しかし、そのほとんどがまともに働ける状態にはなっていません。ある大手企業で特例子会社を設立し、850人の障がい者の方を雇用したのですが、ある日人事部長が頭を抱えて相談に来られて、「毎月60人のリクルーティングをしないと維持できない」とおっしゃるんです。お仕事は何を?とお尋ねしたところ、障害者小規模作業所で行っているような内職程度の仕事をしているとおっしゃる。
 しかし、それは仕事なんでしょうか?
 私だって、そんな仕事をやらされてたら、つまらなくてすぐ辞めちゃうと思います。障がい者の方だって人格とプライドがあります。
 本業で採用しなければ長続きするわけがないんです。
 
  では弊社はどうしているかというと、実は障がい者の方に働いていいただいて、大変儲かっています。
弊社は食品用トレイの成形とともにそのリサイクルにも努めており、全国のスーパー約1万カ所にリサイクルボックスを設置していますが、その選別センターの従業員の90%以上が知的障がい者です。
 
 かつては、大型機械で選別していましたが、機械の減価償却が終わったタイミングで障がい者で試してみたところ、ベルコンベアだけで処理量が1.5倍になり、選別品質は2倍にアップ、リサイクルペレットの精度も向上したんです。これはすごいということで、機械はすべて廃止して150名の障がい者を雇用しました。これはすべて私たちの本業としての仕事なんです。
 
 こうやって雇用していると、定着率が非常に高くなります。
32年前、最初に作った千葉の工場は10人でスタートしましたが、今も9人勤務しています。ダックス高知は21年になりますが、14人の創業メンバーのうち10人がまだ働いています。調べてみると、障がい者を完全に8時間労働で週40時間以上、正社員で雇用している企業は全国でもほとんどないようですが、きちんと本業で雇用するとしっかりと定着してもらえるんですね。
 
 
 また、出勤率がとても高いことも評価されています。全工場で98.7%。有給休暇もなかなか使ってくれなくて困っているくらいです。通常の障がい者雇用というと、なかなか思うように出勤してくれないことが多く、会社として当てに出来ないケースが多いのですが、これだけ高いとちゃんと会社として当てにできる。これは大きな成果です。
 
 よく、「障がい者の方だと作業が遅いんじゃないか」と言われます。
確かにスピードだけ見ると、健常者の8割くらいと言えるかもしれません。しかし、大学の先生に調べていただいたところ、おしなべて見ると、健常者の方よりも効率がいいことが分かりました。無駄話をしない、タバコ休憩をしない、嘘を付いて休んだりしない。若干手間はかかるかもしれませんが、10年20年続くとその差は関係なくなります。
 
 つまり、これまでの障がい者雇用は、彼らが「できない」という前提で進められていたわけです。だから簡単な発送作業やシュレッダーかけみたいな仕事しかやらせない。これでは彼らも面白くなくて当然です。彼らも私達と一緒。自分が会社、社会の役に立っていると感じて、働く誇りを持って、そこで初めて人間としての成長がある。健常者だって左遷されたら鬱になって辞めちゃう人がいるじゃないですか。あれと同じですよ。