都市開発にかける人たち Vol.5

岡山市駅元町第二種市街地再開発事業「リットシティビル」

その時事業が動いた

岡山駅西口地区−そこは開発が進んでいる東側と相反して、戦災による壊滅的な被害を受けなかったがために、開発の流れから取り残された地域であった。開発の気運は古くより起きていたが、事業推進経験の少ない地元の力だけでは実現するすべが見つからないでいた。そこで、岡山市が、東西一体的に岡山の玄関口に相応しい街にすべく動き出し、再開発事業が歩みを見せたのだ。しかし、かのバブル崩壊による影響を受け、再び壁に当たってしまった。

その時事業が動き出すきっかけとなったのが、特定建築者制度の改正である。これにより、改正前にあった制約が緩和され、計画の自由度が大きく広がった。推進が困難となっていた施行者による施工部分を、特定建築者によりまとめて施工することが可能となったのだ。そして、改正特定建築者制度の全国第一号として、大成建設が選定され、事業が動き出した。
大成建設としても、初めてのスキームであったため、手探りの厳しい状況もあったが、開発部門、設計部門、建築部門等各部門のノウハウを結集することができたことにより、事業を推進する力となれたのである。

特定建築者制度とは・・・
市街地再開発事業において、本来であれば、施設の建築・整備は施行者(=岡山市)自ら行うのが原則であるが、施設を売り渡す相手(特定建築者=大成建設)に計画・建築を行わせることができるのがこの制度の基本である。しかし、都市再開発法改正前は開発対象地域内の土地に元々権利をもつ権利者の所有部分(権利床)以外の部分(保留床)のみからなる建物にしか適用できないという制約があった。これが法改正により、権利床を含む建物にもこの制度が適用できるようになった。

地元・官・民が三位一体となって実現した街づくり

「商業テナントの誘致、コスト低減等、民間の力を活用する事で事業を展開できました」と、岡山市都市整備局都市開発部駅西口開発事務所 所長 山上晃稔氏は語る。しかし、当然ながら特定建築者の力だけで事業が進んだ訳ではない。岡山市も、施設の核となるNHK岡山放送局の誘致や270台を収容する地下駐車施設の独立採算化などの調整を推進した。
NHK岡山放送局の移転は、デジタル化時代に対応した増強が必要ながらも、既存の場所が城跡で都市計画公園内にあったために増改築を阻まれていた状況に、タイミングが合致した。さらに、岡山市としても別の場所で計画があった歴史博物館を放送局と馴染みの良いデジタルミュージアムとして併設する計画がまとまった事でさらに事業が進むきっかけとなった。
官の力、民の力だけでは厳しかった事が、互いの活動により相乗効果を生み出したのだ。

事業の推進力となったのは、岡山市と特定建築者ばかりではない。地元市民の岡山市繁栄への願いが事業化への第一歩の原動力となった。
開発地区の地権者の1人でもあった、現在の岡山全日空ホテル 社長 大岩道典氏は、隣接工区のコンベンションセンターの設置にも尽力され「ホテルとコンベンションセンターの機能を一体化することで地域全体への経済波及効果が生み出され、地域全体の活性化につながって欲しいです」と願っている。
リットシティビルの片翼を担っているホテル部分も、当初の計画から紆余曲折を経て、デザイン性を重視したハイグレードな作りの岡山全日空ホテルとして、施設全体の魅力を高めている。実際、背後に水が流れるスタイリッシュなフロント空間等のオープン後の評判は高く、敷居を高くしすぎずオープンな配置となっている1Fレストランも連日賑わいを見せている。

施設完成後も見据えたルールづくり

様々な用途が、複合して魅力をアップさせているリットシティビルではあるが、それが故に課題もあった。建物の共用部が部分共有を含め10種類に区分される複雑な構成となっており、それを立場の異なる8事業者が有機的に共有するため、計画段階から建物全体の綿密な管理運営計画策定が必要であった。個々の事業者だけでは成し得ない事であるため、施設計画を知り尽くす大成建設が主導して、オープン後も踏まえた全体の利益のために全事業者と地道な協議を重ね、建物使用のルールをまとめあげた。

特定建築者は建物を建てるだけではない -テナント誘致-

様々な状況をクリアして事業が推進された訳であるが、その最大のポイントの一つであったのが、商業テナントの誘致であった。パイロット事業に相応しいテナントを誘致するため、大成建設の担当者達は200を超える商業テナントへアプローチを行った。「テナントが決まらないと内装の設計も工事も始められない。多くの人が関わってきた事業をここで足踏みさせる訳にはいかない。というプレッシャーを受け、夜も眠れない日々の末、無事テナントが決まり、着工できた時が一番嬉しかったです」と大成建設の広島支店営業部開発室 梶山剛は想い返す。「建物が完成した時が一番嬉しかった」と語られる事が多い業界の中で、印象的な言葉であった。

商業テナントの誘致の呼び水となったのは、東京で評判のパティシエ高木康政氏が直営店以外で初めてディレクションした「パティスリー シュクリエール」だ。高木氏のもとで技術を習得したシェフパティシエ 北時大氏は、「高木氏直伝の味と岡山らしさを融合したスイーツを目指しています」とのことだが、その店構えも、洗練された都会的なイメージをベースに持ちつつも馴染みやすいオープンな印象となっている。そのコンセプトは、施設全体のイメージにも共通しているものと言えるだろう。オープン後は、県外からもお客様が訪れる程の評判で、午後には売り切れの商品も続出している程の人気だ。

事務所テナントの入居にも大きな決断が必要になる。創業150周年を期に本社機能をリットシティビルへ移転した「カンコー学生服」で全国に名を轟かす尾崎商事(株)もその一つである。尾崎商事(株) 専務取締役 尾崎茂氏は、「移転決断のポイントの第一には、駅近接という利便性に富む立地条件の良さが挙げられます。お客様へのアピール力を強め、かつ社員の都市型生活への選択肢を広げるとともに優秀な人材確保につなげたいですね。また、最新設備が整備されていること、大規模ビルのため従来5フロアに分かれていた部門を1フロアに移行でき、コミュニケーションの向上が狙える事なども決断の要素となりました。さらに、岡山のランドマークとなる建物に拠点を構えることで、意識改革を促進して、より斬新な発想を生み出していければと願っています」と語った。
尾崎氏が語った入居決断のポイントは、他の事務所テナントにおいても、共通した事由であろう。

オープンを迎えて・・・

再開発発意より約20年の時を経て、2005年8月27日、リットシティビルはオープンを迎えた。岡山駅西口周辺はこれまでとはガラリと変わった顔を見せ、近くにある奉還町商店街の人の流れも変わってきているとの声も聞かれている。
「ここが、市民の皆様にとって誇りを感じられるスポットとなり、東西一体的な発展の起爆剤になることを願っています」と大成建設の広島支店営業部開発室 五百森英右は想いをはせる。この想いは、市の担当者として力を尽くした山上氏、地元地権者の1人でもある大岩氏を始めとする事業に関わった人々に共通したものであろう。
市民待望のリットシティビルが新たな賑わいを呼び込む岡山のエントランスゲートとして定着するよう、大成建設はサポートを続けていく。









岡山市 都市整備局
駅西口開発事務所
所長 山上晃稔 氏


岡山全日空ホテル
社長 大岩道典 氏



大成建設 広島支店開発室
梶山剛

パティスリー シュクリエール
シェフパティシエ 北時大 氏


尾崎商事(株)
専務取締役 尾崎茂 氏



大成建設 広島支店開発室
五百森英右

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