都市開発にかける人たち Vol.3

「市川七中行徳ふれあい施設」

たくさんの苦労のなかに、夢と希望を見いだして

2002年6月、市川市から2つのPFI事業の実施方針が発表された。老朽化が著しい市川市立第七中学校の建替えを契機に、余裕容積を活用して公会堂と保育所を整備する事業と高齢者福祉施設を合築で整備・運営する事業である。これらは適用可能な補助金が異なるため、2つのPFI事業を同時平行で推進する全国初の事業スキームであった。

2つのPFI事業だから生じる労苦を思う反面、大きな夢と希望をそこに見い出した男たちがいた。大成建設・PFI推進部の丸山 忍と千葉支店開発室(現・都市再開発部)の清谷俊雄である。

出発点は「すべての利用者に喜ばれるものをつくる」ことだった。

大成建設1社だけでむこう15年間の事業を遂行することは極めて困難である。コンペのエントリーにあたり、運営を担う保育所事業者と福祉事業者を早急に探す必要があった。在京の大手企業も視野に入れたが、やはりそこは地域に根ざしたサービスが提供できる地元事業者に、飛び込みで直接打診することに。その後は計画に賛同する事業者にめぐり会え、大成建設が代表企業となって、志(こころざし)を同じとするパートナーたちとともに、応募に向けて邁進することとなる。

すべては時間との戦い———しかし、妥協は許されない

本事業は、提案から竣工・オープンまですべて時間との戦いであった。

さまざまな要素を考慮し、より使い勝手の良い施設プランを作成する。また15年間にわたる事業を円滑に賄えるだけの条件の良い資金調達を行うため、金融機関と何度も交渉。建設コスト及び運営・維持管理コストの低減を図る。そしてグループ内での合意を得ていく。彼らは走り続け、これらをわずか2カ月で行った。

取り組む課題も多かった。例えば、「ふれあい・交流」をコンセプトとした施設において子どもから高齢者までの世代間交流をどのように施設内に反映させるか、どのような交流が考えられるかなど。また、児童を巻き込んだ犯罪等も憂慮して、学校のセキュリティ面も第一とした。募集要項では、校舎は仮使用という形で2学期を迎えることとなっていたが、丸山と清谷は、全施設一括竣工をあえて提案した。

具体的なプランとしては、交通量が多い幹線道路に面する敷地条件から、騒音問題に配慮したレイアウト計画や、学校が無人となる夜間でも公会堂が稼動していることに着眼し、外からも賑わいが感じられる夜間景観等も考慮に。裸足保育を実践している保育所には募集要項より多くの諸室に床暖房を採用。近隣住民の生活環境にも配慮し、市が想定した8階建て案を5階建てまでに抑え、フロア面積を多くすることで圧迫感の少ないプランを提案した。

9月、プラン提出の時期を迎える。
当グループの他に2グループが応募したが、見事、優先交渉権を獲得。その後、翌年2月に大成建設が最大出資者であるSPC(特別目的会社)「市川七中行徳ふれあい施設(株)」を設立し、3月にSPCと市川市が事業契約を締結することになる。
いよいよ設計業務を経て本体工事着工。工期は12カ月と大変厳しいものであったが、その間に事業関係者への進捗説明・協議を毎月2回行い、双方で現況を確認した。

明るい未来と笑顔がつまった
市川七中行徳ふれあい施設が、できた

2004年8月末、竣工。
市川市立第七中学校では、2学期を新校舎でスタートさせた。明るい色で飾られ光の差し込む吹き抜けのランチルーム。各所にベンチシートを設置し、生徒と教師とのコミュニケーションの場にもなった生徒ラウンジ。広く開放的な廊下はこどもの心にゆとりを生む。高齢者や保育園児たちとの交流により、生徒たちのやさしい気持ちが引き出されるようだ。

保育所(すえひろ保育園)は年度半ばの10月開所にもかかわらず、すぐに募集定員を満たした。保護者の感想も上々である。全室床暖房ということで園児はもちろん、職員にも快適な環境となった。デイサービス(行徳デイサービス そよ風)には市南部及び浦安市からも利用者があるという。中学校の校庭に面した食堂は日差しが差し込み、とても明るい空間となっている。行徳駅に近く、立地の良い都市型の施設として、ケアハウス(行徳ケアハウス 翔裕園)も順調に運営されている。公会堂(行徳文化ホールI&I)は地域コミュニティの核となった。柿落としのイベントでは地元中学生による吹奏楽の演奏会を開催、たくさんの観客を集めた。また、「よさこいソーラン」をステージ上で披露、市内の12団体が競演し大いに盛り上がった。

今後、PFI事業終了(2021年3月)までの約15年間、(社会福祉法人)柏井福祉会は保育所の運営を、(社会福祉法人)長寿の里は福祉施設の運営を、SPCは施設の維持管理業務を、各自が責任持って遂行していくことになる。この事業は、老朽化した義務教育施設の建替えを機に、地域特性を勘案し計画された複合施設として、全国からの視線も熱い。ちなみに計画段階から竣工後3ヶ月までの間で85件、約600名の視察者を迎えている。

この事業に携わったすべての関係者は、このふれあい施設が市民の方々に末永く愛されることを心より祈っている。

新しい息吹により動き始める
大成建設のPFI事業
大成建設は、都市開発事業に関して30年余の実績があるなかで、PFI推進法の施行時(1999年)にあわせ、専門部署を立ち上げ、PFI案件への応募に果敢に挑戦してきました。事業全体をコーディネートできる能力を備え、質の向上のためには努力を惜しまないスタッフを抱えている、と自負しています。PFI事業は、施設用途、事業のしくみ、事業期間も多種多様です。そのなかでつねに追い続けるものは、「我々の持っているノウハウで最高の公共サービスを」という熱い想いです。

市川市自体、PFI事業が初めての経験で、十分なスケジュールを組めなかったことや庁内における実施体制の確立までに時間を要したことが反省されます。12カ月という工期、また限られた事業費のなかで、大成建設は技術力のある施工をしてくれました。現場管理も適切に実施されておりました。アフターサービスにも期待しています。 初期段階から計画に携わっていたので、大成と一緒になって作り上げたという気持ちです。広い廊下やベンチスペースなど、私たちの希望や想いをきちんと実現してくれました。街を活性化する核として、「ふれあい・交流」をぜひ、持続させていきたいと考えています。 このホールは、市民利用を主な目的とした「大人の雰囲気」を持つ施設として運営したいと考えています。民間ならではの提案により、良い意味で市の発想を壊し、デザイン性が高く、音響効果にもすぐれた機能的な施設に仕上げていただきました。今後の維持管理にも大いに期待しています。 長年福祉施設に携わっていますが、当施設のように子どもたちの姿が身近に感じられる施設は、高齢者の方には心地よい限りです。まだ試行段階ですが、今後もっとお互いの施設を自然に行き来ができるといいですね。天井が高く開放感のある室内は、利用者からも好評です。 とにかく園舎全体が明るい。大きな窓が随所にあり、園児の様子がすぐわかる造りになっているので安心です。大成建設に相談して、念願だった収納舞台も設置できました。開所後、さっそく園児たちが七中の文化祭やケアハウスの催し物に参加。今後もいろいろな交流ができれば良いと考えています。

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