都市開発にかける人たち Vol.12

COCOLAS大津

大津駅西地区第一種市街地再開発事業

住民主体で始動した土地区画整理事業

滋賀県大津市春日町。本地区周辺は、大津港を中心に昔から北陸地方から船で運ばれてきた物資を京都へ牛車で運ぶ中継地点であり、また、東海道五十三次の53番目の宿場町として栄えた。業務・商業の集積地であるとともに、周囲を琵琶湖や山に囲まれた自然豊かな環境である。また、名神高速道路の大津ICに近く、JR東海道本線では京都まで最速10分、同じく大阪まで40分と交通の便もよい。

一方で、駅前の商業・業務地域と木造密集市街地からなる住宅地で構成され、地区内道路は狭隘で通過交通が多く、また、度々火災が発生する等、安全性・防災性の問題を有していた。阪神・淡路大震災や地区内の火災を契機に地元住民による防災に強いまちづくりの機運が高まり、2004年度に大津駅西地区まちづくり協議会・推進部会の「春日クラブ」が発足した。2005年度には土地区画整理事業(以下「区画整理事業」)の実施について住民の9割以上の同意を得て、区画整理事業を主体としたまちづくりが本格的に動き出した。


区画整理事業の仕組み


通常の区画整理事業は、道路、公園、河川等の公共施設が未整備の一定区域において、地権者からその権利に応じて少しずつ土地を提供(減歩)してもらい、この土地を道路・公園等の公共用地が増える分に充てる他、その一部を売却し事業資金の一部に充てる事業制度である。

しかし、本区画整理事業では具体的に検討する中で、区画整理前の公共用地の割合に比べ区画整理後の公共用地の割合が大きいため、区画整理後に各宅地の利用価値は高くなるものの、宅地面積の減少が大きく、地区全体の宅地総価格が減少し、地権者によっては宅地利用が困難になるなど、区画整理事業単独での合意形成は難航が予想された。

そこで、区画整理事業区域内で最も地価の高い駅前の街区に市街地再開発事業区(以下「再開発区」)を設定し、さらに高度利用を図ることで、区画整理事業区域からより多くの地権者に再開発区への換地を促し、各々の減歩面積の低減を図ることが唯一の打開策であったため、「区画整理事業と市街地再開発事業(以下「再開発事業」)の一体的施行」を採用することとなった。


再開発事業への参加者一覧図

COCOLAS大津 再開発事業への参加者一覧図

再開発事業としては、2007年に準備組合が発足し、2008年に事業協力者として、大成建設と野村不動産の共同事業体が選定された。そして、大成建設は事業推進の役割を担うため、再開発準備組合事務局に人員(事務局員)を派遣することとなった。

当社初の試みである区画整理事業との一体的施行

大成建設 設楽亮一

首都圏を中心に再開発事業は大成建設の得意な分野の一つであるが、区画整理事業との一体的施行は初の試みであった。1999年に土地区画整理法、都市再開発法の改正が行われ、一体的施行が法的に位置付けられたものの、異なる事業者(施行者)が別事業を推進するため手続き等が煩雑であり、事例がほとんどない状況であった。

そのような中、再開発準備組合の事務局員として派遣された、大成建設関西支店営業部(開発)の設楽亮一は、区画整理事業の施行者である大津市、関係コンサルタント等と共に、日々基本的なことから検討を始めた。

設楽は当時をこう振り返る。「再開発事業に参画する地権者の方に、再開発事業の事務局として説明に伺うのですが、区画整理事業で換地を受ける方は、「隣には説明に来ているのに、うちには来ていない」等、誤解されることもあり、大津市と連携しながら両事業の仕組みを説明し、区画整理事業による換地(個別建替え)、再開発事業への参画(建物共同化)という多様な生活再建策を提案しながら進めました。また、権利者への補償の扱いなど、一体的施行ならではの難しさがありましたが、逆にメリットもありました。当地区の場合、再開発事業の敷地は区画整理事業で宅地整備まで行って頂いたので、権利変換期日後、すぐに着工できるなど、事業スケジュールの短縮や補償費の軽減につながりました。」


通常の再開発と一体的施行の違い

地元との協働のまちづくり

再開発事業に地元の意見を取り入れる際、区画整理事業の地権者が設立した「春日クラブ」は大きな存在であった。「春日クラブの方々からは常にご指導ご協力を頂き、時には怒られもしましたが、一緒にまちづくりをすることができました。建物デザインや施設構成、コンセプト、事業進捗について何度も説明会や報告会を開催させて頂くことで、大津の歴史や風土なども教わりデザインやコンセプトに反映することができました。」(設楽)

例えば、施設建築物のエントランスプラザには、モニュメントとして大津の歴史資源の一つである「車石」のレプリカを設置したが、これは車道・車石研究会、春日クラブの方々と共に視察や勉強会を経て完成させたものだ。

大成建設 緒方奈美

設楽と共に、事務局員として再開発組合の立上げ当初から事業推進に携わった大成建設関西支店営業部(開発)の緒方奈美はこう語る。「準備組合の事務局運営を軌道に乗せる準備から携わりましたが、権利変換期日を迎える頃が、組合の行事等も重なり特に多忙でした。また、工事着工前は事業に対する周囲の認知度も低く、数年間に亘る事業の実現について、周囲の半信半疑のような空気を感じることもあり、とても長く感じました。」(緒方)

そのような状況でも、事務局員たちは組合行事の一環として、大津のまちづくり活動にも積極的に参加し、地元とのつながりを深めていった。


藤本副所長

また、当地区に近接する大成建設関西支店滋賀営業所は、地元や行政の方とも良好な関係を築いていたため、副所長の藤本茂も、再開発組合事務局員として主に地権者対応や近隣対応等を行い、事業を支えてきた。

「大津に生まれ育ち、大津で仕事と60年以上この地にいます。私の母と仲が良かった組合員の方もおり、私は既に60歳を超えていますが、中学生時代の「ボン」という呼ばれ方をされ、気恥ずかしい想いもしました。自分が住み続けている大津でこのような大きな事業に携われたことは大変嬉しく思っています。」(藤本)

そして、地道な事業推進の結果、2011年7月には権利変換計画認可を経て、同年10月に施設建築物の着工を迎えることができた。


第2回 滋賀B級グルメバトル in 浜大津サマーフェスタ2012

参加組合員としての住宅分譲事業

2010年に大成建設は、野村不動産と共に参加組合員にも選定され、住宅保留床を取得し住宅分譲事業を行うこととなった。

分譲住宅のマーケティングから価格の決定、モデルルーム案内、内覧会、引渡しまでの一連の流れに携わった大成建設関西支店営業部(開発)の辻 由子は当時をこう振り返る。「計画地は、北側に琵琶湖が一望でき、南側はJRの線路を挟んで遠くに山を仰ぎ、東側も駅前ロータリーに面して視界を遮るものはなく、住宅立地としては非常に恵まれていました。販売開始からわずか1ヵ月という短期間で完売し、購入された皆様にも大変ご好評を頂きました。竣工引渡し時には、無事161戸全ての住戸を引渡すことができました。」

このように大成建設が、再開発組合の事務局業務、施工、そして住宅分譲事業等、様々な立場で事業に関わることにより、全体調整をスムーズに行うことができたことから、本事業において、参加組合員として参画した意義は大いにあったと言える。「参加組合員として再開発に取り組んだことで、施主の立場で建築工事の定例会議にも出席し、皆と共に建物を造っていくという実感を得ることができただけでなく、“まちづくり”に携わることができたことを嬉しく思います。」(辻)

COCOLAS大津 29階バルコニーからの眺め

竣工を迎えて

2013年11月、再開発準備組合の設立よりわずか6年というスピードで、施設建築物の竣工を迎えることができた。建物名称である「COCOLAS(ココラス)大津」には、大津は“湖都”であり“古都”でもあることから、それぞれの頭文字(CO)を2つ重ねるなどの工夫がなされている。

設楽は大成建設そして大津市にとっても初の試みとなった区画整理事業との一体的施行をこう振り返る。「わが国では少子高齢化・人口減少が急速に進んでいる一方、高度成長期に整備したインフラや建物の更新時期も迎えており、コンパクトシティが今後地方都市が目指していくべき一つの姿となるでしょう。そのためには既存市街地の整備は不可欠であり、主にインフラや宅地を整備する区画整理事業と施設建築物を整備する再開発事業の一体的施行は、地権者の皆様の生活再建の選択肢を増やすとともに、柔軟な計画作りを可能とし、市街地における再開発の整備手法として有効だと感じています。大変タイトなスケジュールの中、常に前向きに事業を推進して頂いた渡辺理事長以下組合員の皆様、再開発事業の推進にまちづくりの観点から常に積極的にアドバイスして頂いた春日クラブのメンバー、滋賀県、大津市の担当者、事業コンサルタント等の多くの方々に支えられてCOCOLAS大津が生まれたものと心より感謝しています。」


再開発組合理事長より

大津駅西地区市街地再開発組合 理事長 渡辺 茂 様
〜生まれ育った街が変わる〜

ここは私が生まれ育った街ですが、通過交通による安全性や木造密集等による防災性に大きな問題があり、私より先輩の方々の「より良い街にしよう」という想いで始まった事業です。

地元の方々が中心となって事業を進めてきましたが、土地区画整理事業との一体的施行という複雑な事業でもあり、大成建設を始めとする事業関係者の方々に、様々な点でサポートして頂いた結果、新たな駅前の顔としてCOCOLAS大津が誕生しました。これもひとえに、地権者・地元の方々、大津市、事業関係者全員の熱い想いの結果であり、皆がまとまればこのように大きなことができるのだと実感しています。

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