ごあいさつ

辻田 修

ここに,大成建設技術センター報第46号をお送りします。

 9月8日早朝,「2020年東京オリンピック開催決定」の吉報に国中が歓喜したのは,まだ記憶に新しいところです。前回の開催は,高度経済成長期にあって,国の威信をかけた国家的プロジェクトであったように思います。各種の産業が加速的に発展していく中,我々建設業に課せられた役割も大きく,革新的な建設技術が多く産まれた時代でもありました。当社においても,メイン会場となった「国立競技場」や我が国初の超高層建物となる国際級ホテルの建設,首都高速道路や鉄道などの動脈網整備など,1964年の開催に向けて,高品質かつ短工期での工事実現のための画期的な建設技術を数多く創成しました。
 前回の開催から半世紀を経た今,2020年の開催を確かなものとするためには,さらなる革新的な建設技術の創成が急務となっています。
 このような中,今回の特集では,高難度のプロジェクトを支える最先端の建設技術を取り上げています。総説では,現在の最新技術を概説するとともに,近い将来に向けた建設技術のあるべき姿についても触れています。各論では,「ものづくり日本大賞 内閣総理大臣賞」をはじめ数々の賞を拝受した超高層建物の解体工法「テコレップシステム」の適用工事や,10月29日の開通式に安倍首相が参列されたトルコボスポラス海峡横断鉄道建設など,近年の代表的な大型プロジェクトについて,それらの達成のために貢献した開発技術を詳細に紹介しています。
 一般論文では,「材料」,「構工法」,「防災」,「環境」および「ICT」のカテゴリーに分け,それぞれの研究開発に関する最新成果を報告しています。いずれも,環境に配慮し,より安全・安心な社会基盤の実現を目指す技術です。東日本大震災から3年が経過し,その間に注力して取り組んできた地震・津波対策に関する研究成果,その復旧工事を通して生じるがれきの処理技術,さらには昨年の福島県内の放射能汚染地域の除染技術に関する研究成果にも触れています。
 現在,技術センターでは,社会環境の変化に即応すべく,2017年の完成を目指して,ZEB実証機能を備えた実験棟をはじめとする新しい実験施設の拡充を進めています。その一環として,今年4月には,「建設ICT実験棟」,「津波造波装置」,「クリーンルームテクノロジー実験施設」および「YSCP実証施設」などの新施設見学会を開催し,多くの皆様に,当社の研究開発強化への姿勢を知っていただきました。一般論文には,これらの新しい施設で得られた成果も紹介しています。
 今年10月に日本全国を強襲した大型台風とその記録的大雨は,土砂災害を誘発し,伊豆大島に甚大な被害をもたらしました。被災された皆様には心よりお見舞い申し上げます。
 一昨年の東日本大震災はもとより,ここ数年,予想をはるかに超える災害が頻発しています。災害に対して強靭な社会基盤を築くために我々建設業が担う役割と使命の重さを改めて痛感しております。

皆様におかれましては,この大成建設技術センター報をご高覧いただき,御指導御助言を賜りますとともに,ご活用いただきますよう御願い申し上げます。

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