ごあいさつ

辻田 修

ここに,大成建設技術センター報第45号をお届けします。

今年の7月初めに世界防災閣僚会議が東日本大震災の被災地である宮城県仙台市で開催され,「強靱な社会」を構築することが喫緊の課題であると確認されました。「強靱な社会」とは,自然災害に対する予防,減災,緊急対応,復旧,復興などのあらゆる備えができている社会であり,災害が発生した場合でも被害を最小化できる社会とされています。この「強靭な社会」は「resilient society」と英訳されています。「resilient(レジリエント)」とは,元々はバネやゴムの弾性復元力を意味しますが,これから派生して「病気,抑圧,不幸な状態からの速やかな回復」の意味でもあります。本号の特集は,この言葉をキーワードに「レジリエントなまちづくりに応える技術」としました。災害に対して強靭で持続可能な社会を築くために,我々建設業が担うべき役割を果たすための最新の技術を紹介します。

昨年3月の東日本大震災からまもなく2年が経過しようとしています。当社は震災の翌日から被災地域の応急復旧に取り組んできました。現在は,建物や施設の復旧工事に加え,大量のがれきの処理や,福島県内の放射能汚染地域の除染作業に取組んでいます。(除染・がれき処理・津波)
東日本大震災後の電力需給の逼迫事情や地球温暖化防止への社会的要請に応えるために,節電,省エネルギー,再生可能エネルギーの積極的な利用,これらは,今後のエネルギー政策見直しの結論を待たずとも,我が国にとって不可欠であることは間違いありません。(ゼロエネルギー化)
内閣府中央防災会議は地震・津波対策の抜本的強化と防災対策の見直しを行っています。そこでは南海トラフの巨大地震モデルが変更され,最悪の場合の死者は32万人にも達するとする被害想定が公表されました。近い将来,高い確率で発生が予想される首都直下地震や東海地震,南海トラフで発生するマグニチュード9クラスの巨大地震への備えは緊急の課題です。(地震動予測・液状化対策)

特集のほかにも,「材料」,「構工法」,「防災」,「環境」および「ICT」の各分野における最新の研究開発成果を報告しています。そこには,世界最高強度のコンクリートの実用化や,超高層建物の閉鎖型解体工法「テコレップシステム」など,社外から高い評価を受けた技術も含まれています。
「ICT」は本号から新たに加えた技術分野です。調査・設計・施工・維持管理・修繕の一連の建設システムにおいて,効率化・高度化による生産性向上に寄与する情報通信技術を「建設ICT」と呼んでいます。今後の発展が期待されるこの新分野における当社の最新の成果を紹介します。

皆様におかれましては,この大成建設技術センター報をご高覧いただき,ご指導ご助言を賜りますとともに,ご活用いただけますようお願い申し上げます。

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