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浮き型地下ダムにおける効率的淡水取水方法と塩淡境界挙動に関する研究

増岡 健太郎*1・山本 肇*1・青木 智幸*1

Study of an Effective Pumping System and the Behavior of a Freshwater/saltwater Boundary for a Floating-type Underground Dam

Kentaro MASUOKA*1, Hajime YAMAMOTO*1 and Tomoyuki AOKI*1

研究の目的

近年,サンゴ礁の島などにおける淡水レンズ強化技術として,『浮き型地下ダム』が注目されてきています。しかし,淡水取水時の局部的な塩水の上昇混入(アップコーニング)の発生や,淡水の貯留に伴う塩淡境界挙動および淡水貯留期間の予測などの課題が残っています。本研究では,浮き型地下ダムに貯留した淡水の効率的な取水方法として考案した鉛直二重揚水法の効果の確認と課題の抽出を目的とし,室内試験ならびに数値解析による検討を実施しました。また,実際のダム構築に対する課題の抽出を目的とし,淡水貯留シミュレーションにより,ダム構築後の塩淡境界挙動を検討しました。

技術の説明

淡水の取水時,一点で取水すると取水点に向かう流れは全方向から均等に発生し,塩水のアップコーニングが発生し易くなります。しかし,二点で取水すると,二点の間のある地点で流速が相殺されます。鉛直二重揚水法とは,この原理を利用したもので,塩淡境界を挟んで塩水側と淡水側で同時に取水することで,塩淡境界付近の取水方向の流れを相殺し,塩水のアップコーニングの発生を低減させる技術です。

主な結論

鉛直二重揚水法の検討では,室内試験結果と解析結果は概ね同じ傾向を示し,本手法によって局所的な塩水の引き込みを抑制できる可能性が示されました。また,淡水貯留シミュレーションの結果から,浮き型地下ダムの外側では塩水の湧昇流が発生し,既存の淡水レンズの層厚を減少させる可能性があるなどの課題が明らかになりました。

*1 技術センター 土木技術研究所 地盤・岩盤研究室