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医療施設における臭気制御に関する研究

弱酸性次亜塩素酸水溶液の汚物臭に対する性能試験

洞田 浩文*1

A Study on Odor Control in Medical Facilities

Test of Hypochlorous Solution for Controlling Odors from Excrement

Hirofumi HORATA*1

研究の目的

医療施設における「におい」に関しては,排泄物由来の便臭や尿臭といった汚物臭や体臭が問題とされており,換気や空気清浄機,消脱臭剤による対策がとられています。しかしながら,おむつ交換時などの汚物臭は,特に臭いも強く,効率的な対策法が確立しているとは言い難い状況です。
本研究では,消脱臭剤としての利用の可能性を有する弱酸性次亜塩素酸水溶液に着目し,汚物臭対策への利用の可能性を検討しました。

技術の説明

弱酸性次亜塩素酸水溶液は,殺菌等に利用されることの多い次亜塩素酸ナトリウムと希塩酸を水で希釈して生成し,pH6程度の弱酸性にすることで消臭や殺菌に寄与する次亜塩素酸が高比率となります。次亜塩素酸ナトリウムも希塩酸も食品添加物として認められています。
臭気発生源に向けて弱酸性次亜塩素酸水溶液を噴霧することで,次亜塩素酸の酸化による化学変化等で臭気制御を行います。臭気制御としては,酸化による無臭物質への分解によるにおいの強さの低減や,別の臭気物質となることにより不快な臭気からのにおいの変化などが期待できます。

主な結論

性能評価試験として10リットル容器による基礎試験,病室を模擬した空間による効果検証を行いました。弱酸性次亜塩素酸水溶液による臭気制御効果としては,においの強さを低減する効果よりも,原臭を別の臭気や塩素臭として感じるように「においの質」が変化することが寄与し,不快度が低減することがわかりました。
今後は,弱酸性次亜塩素酸水溶液による臭気制御法を空調換気システムと効率的に組み合わせることで,より一層効果の高い臭気制御法として開発を行ってゆく予定です。

*1 技術センター 建築技術研究所 環境研究室