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風上の建物が高層建物の外圧係数・風振動に与える影響

寺崎 浩*1・中村 良平*1

Effects of a Windward Building on the Pressure Coefficients and Wind-induced Vibrations of a Tall Building

Hiroshi TERAZAKI*1 and Ryouhei NAKAMURA*1

研究の目的

建物に作用する風の力は,周辺の建物に影響を受けることはよく知られていますが,通常の建物は多数の建物に囲まれた市街地などに位置するために周辺建物の影響は非常に複雑です。本論文では基礎的な研究として,同規模の高層建物が2棟だけ建つ場合を想定して風上側にそのうちの一棟が存在するときに,風下側の建物に作用する風の力が,高層建物単独の場合に比べてどのように変化するのかを調べるものです。

技術の説明

高層建物をイメージした塔状比(建物高さ/建物幅)=4の角柱模型を用いて,壁面4面にあけた数百個の計測点の風圧の時刻変化を全点で同時に測る変動風圧実験を実施しました。実験パラメータは風上側に建つ建物の位置の46種類×実験風向11種類として,合計506ケースを計測しました。この実験データをもとに,建物のガラスなどの厚さを決めるための風圧係数の分布を求め,建物単独の値と比較して風上側の建物の位置や実験風向との関係を検討しました。また,建物壁面全体で測った風圧力のデータをコンピューターの中でまとめて建物全体を揺らす風の力に変換して,今回の模型が高さ200mの建物と仮定したときの風による揺れを計算し,居住性能の評価(強風時の船酔い現象)や建物の構造計算に用いる設計用の風の力についても風上側の建物の位置や実験風向との関係を検討しました。

主な結論

限られた建物位置,実験風向に基づく検討結果ですが,風圧係数に与える風上側建物の影響は建物上部の平面端部で特に条件が厳しくなること,建物の特定の方向に風上側の建物が位置するときにその影響が大きいことがわかりました。また,強風時の船酔い現象を起こすような風揺れは風上側の建物の影響により,建物単独の状態の倍近く揺れることがあることもわかりました。この結果を参考に,今後建設する建物で船酔い現象を起こさないような対策の検討に役立てます。

*1 技術センター 建築技術研究所 防災研究室