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ひび割れ発生限界腐食量と腐食生成物の膨張率の定量化に基づく構造・耐久連成解析システムの高精度化

鈴木 三馨*1・福浦 尚之*1・丸屋 剛*1

Coupled-analysis Based on Quantification of Corrosion Weight Loss at Concrete-cracking and the Expansion Rate of the Corrosion

Mika SUZUKI*1, Naoyuki FUKUURA*1 and Tsuyoshi MARUYA*1

研究の目的

島国であるわが国は,多くの鉄筋コンクリート(以下,RC)構造物が塩害による被害を受けやすく,塩害に対する耐久性設計を合理的に実施する必要性があります。塩害に対する耐久性設計の照査段階を,鉄筋の腐食開始から腐食ひび割れ発生とすることで,より合理的な設計になります。そのために,RC構造物の塩害による劣化過程を高精度に予測することが求められています。RC構造物の劣化過程を予測するには,腐食ひび割れ発生過程を適切にモデル化することが重要です。本研究では,腐食生成物による腐食膨張のモデル化を検討し,これまでに著者らが構築してきた鉄筋の塩害による腐食に関する構造・耐久連成解析システムの高精度化を目的としています。

技術の説明

著者らはRC構造物中の塩害劣化過程をシミュレートするため,構造と鉄筋の腐食に関する耐久性の連成解析システムを構築してきました。この連成解析システムは,荷重作用に関する3次元非線形構造解析モデルとFEMを用いた鉄筋腐食に関する2次元耐久性解析モデル,そして,各解析モデル中の材料挙動に相互の解析結果を反映させる相互作用モデルを組み合わせたものです。今回,RC中の鉄筋が受けている拘束圧を再現した鋼材腐食実験を行い,測定した鋼材の腐食生成物の膨張率を解析モデルに反映させることで解析システムの高精度化を実現しました。

主な結論

構造・耐久連成解析システムにおいて入力パラメータである腐食生成物の膨張率を1.1〜2.0と設定することで概ねひび割れ発生限界腐食量を測定した既往の実験結果を再現できることを示しました。本システムにより,腐食ひび割れ発生時期の予測精度が向上します。

*1 技術センター 土木技術研究所 土木構工法研究室