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トンネル坑内変位計測による切羽前方地山予測

青木 智幸*1・今中 晶紹*2・板垣 賢*2・領家 邦泰*3・金尾 剣一*4・櫻井 春輔*5

Using Displacement Monitoring to Predict Rock Conditions Ahead of a Tunnel Face

Tomoyuki AOKI*1, Akinori IMANAKA*2, Ken ITAGAKI*2, Kuniyasu RYOKE*3, Kenichi KANAO*4 and Shunsuke SAKURAI*5

研究の目的

山岳トンネル工事では,日常の施工管理と情報化施工の目的で,トンネルの内空変位や天端沈下などの坑内変位測定が行われています。近年では,その測定に測量器械のトータルステーションを使用することが一般的となっており,XYZの三軸方向の変位が計測されます。しかし,国内では,トンネル横断面内の二次元的な変位のみに着目してトンネルの変形挙動の分析を行っているのが現状です。一方,オーストリアでは,(1)トンネル軸方向の変位を天端沈下と組み合わせて評価する方法や(2)トンネルの距離程に沿う天端沈下の連続曲線の変化から切羽前方の地山変化を予測する方法が十数年前に提唱され,近年,実績を上げてきています。本研究は,この評価方法を国内のトンネル工事に適用し,その有効性を確認することを目的として実施しました。

技術の説明

ここでは,上で挙げた方法の内の一つ(1)を説明します。上図左はSchubertとBudilによる三次元解析結果ですが,トンネルを堅硬な岩盤から軟弱な層に向けて掘削した場合,計測される天端沈下とトンネル軸方向変位の比L/Sを図のような符号の定義にてトンネルの距離程に沿ってプロットすると,図のように,層境の手前から正への値の変化が現れることが分かります。この原理により,坑内変位計測結果から切羽前方の地山の変化を推定することができます。

主な結論

米子自動車道二川トンネルの南側坑口からの掘進時に上記の方法を試験的に適用しました。坑口から27.5〜52.5mの区間に粘土混じりの破砕帯が存在しますが,上図右を見るとその区間の手前からL/Sが正に変化し,軟弱層に入る兆候を示したことがわかります。また,もう一つの(2)トンネルの距離程に沿う天端沈下の連続曲線の変化から切羽前方の地山変化を予測する方法も有効であることが分かりました。今後,さらに多くのトンネルにこれらを適用して事例経験を積むことで,その実用性を高めていきたいと考えています。

*1 技術センター 土木技術研究所 地盤・岩盤研究室
*2 中国支店 二川トンネル工事
*3 土木本部 土木技術部 トンネル技術室
*4 西日本高速道路(株) 中国支社
*5 (財)建設工学研究所