ごあいさつ

辻田 修

ここに大成建設技術センター報(第43号)をお届けします。

今年は,2月にチリ地震(Mw8.8)が発生し大きな被害をもたらしました。また,ロシアの熱波や中国の洪水など,世界的な異常気象が観測されました。一方,国内でも夏に記録的な猛暑が続きました。梅雨期には大雨被害が各地で発生し,大規模な土砂崩れの原因として深層崩壊が注目を集め,ゲリラ豪雨の増加は都心部にも被害をもたらしました。被害を受けられた方々には,心よりお見舞い申し上げます。

弊社の使命は,「人がいきいきとする環境を創造する」というグループ理念のもと,自然との調和の中で,安全・安心で魅力ある空間と豊かな価値を生み出し,次世代のための夢と希望に溢れた地球社会づくりに取り組んでいくことにあります。

最近の取り組みの一端をご紹介させていただきます。先ず,地震国日本において,都市や建築物の安全性を向上させて,BCP(事業継続計画)を確立することは,安全・安心な社会を実現する上で喫緊の課題となっています。

最近,南海トラフ沿いの大地震によって長周期地震動が生成され,都心部の超高層ビルが大きく揺れる新たな危険性が指摘されています。我々はこのような問題に早くから着目し,長周期地震動の予測や対策技術の開発に取り組み,日本で初めて既存超高層ビルの補強技術を新宿センタービルへ実際に適用し,その業績により2010年度の日本建築学会賞(技術賞)を受賞いたしました。

また,持続可能な社会(Sustainable Societies)の構築に向けて,環境保全や省エネへの取り組みの重要性も益々高まってきています。2006年7月から運用を開始した大成札幌ビルは,様々な環境関連の新技術を導入し,2009年度の運用実績でCO2削減率61%(東京都ビル平均値比)を達成しました。また,技術センター本館建物では,業務を継続しながらの「リニューアル(リノベーション)」を2007年2月に完成させて,改修工事という制約がありながら,35%のCO2削減率(東京都ビル平均値比)を達成しています。これらの新築とリニューアルの建物は,共にCASBEE(建築物総合環境性能評価システム)で最高評価のSランクを取得しております。

私どもは,開発した新技術や,長年培ってきた技術力とノウハウを駆使して,お客様のニーズに的確にお応えして個別最適な提案が出来るよう最大限の努力をいたします。これにより,安全・安心で持続可能な社会の構築に少しでもお役に立てればと考えています。

当技術センター報第43号では,「建設におけるICTの利活用」と題した特集を組み,これに関連する13編の論文を掲載しています。また,それ以外にも「材料」,「構工法」,「防災」そして「環境」の4分野に分類して弊社の先進技術について紹介させていただきます。

皆さまにおかれましては,この技術センター報をご高覧いただき,ご指導ご助言を賜りますとともに,ご活用いただくようお願い申し上げます。