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非食用バイオマスからのエタノール転換技術

副島 敬道*1・山本 哲史*1・瀧 寛則*1・屋祢下 亮*1・斎藤 祐二*1

Conversion Method of Nonfood Biomass to Ethanol

Takamichi SOEJIMA*1, Hirofumi YAMAMOTO*1, Hironori TAKI*1, Makoto YANESHITA*1 and Yuji SAITO*1

研究の目的

カーボンニュートラルで食糧と競合しない液体燃料として、木質や草本等セルロース系バイオマスからのエタノール生産が国際的に進められています。ただし、セルロース系バイオマスをエタノール転換するには、トウモロコシ等の糖質系やサトウキビ等のでんぷん系バイオマスより技術的なハードルが高いため、製造コストの低減が大きな課題となっています。本研究は、セルロース系バイオマスとして稲わらを対象とし、より省エネルギーで安価に稲わらをエタノール転換する技術の構築を目的としています。

技術の説明

稲わらに代表される単子葉植物は、アルカリ浸漬の前処理を施すことにより、酵素糖化効率が大幅に向上します。アルカリ処理は常温常圧の反応なので、ボールミル粉砕、熱水処理、希硫酸処理といった既存技術と比較して、省エネルギーかつ低コスト、かつ運転管理が容易です。セルロースの結晶構造について、アルカリ処理とボールミル粉砕との比較を行い、またアルカリによって溶出する物質の分析を行い、アルカリ処理が稲わらの酵素糖化効率を向上させるメカニズムについて解明しました。

主な結論

検討の結果、これまでアルカリ処理の効果とされていたリグニンの溶出除去のみならず、セルロースの分子量分布の広がりや粒径の減少が観測され、アルカリによる処理がセルロースに対しても影響している事が判明しました。さらに稲わらのような草本系単子葉植物に対しては、アルカリ浸漬のみでリグニンとセルロースの結合を介在している物質の溶出や、シリカの溶脱が起きていることが確認されました。これらの前処理効果により、後段の酵素糖化率が飛躍的に向上することがわかりました。

*1 技術センター 建築技術研究所 環境研究室