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GISを用いた植生・土壌・水源涵養による自然度とオオタカHSIモデルによる生息適地の定量化

建設工事と生物多様性保全の両立を目指して

大野 剛*1・藤原 靖*1

Quantification with Emphasis on Degree of Human Disturbance due to Conservation of Vegetation, Soil, Water Head Conservatiom and Habitat for Accipiter gentilis by HSI-Model using GIS

Construction Work with Biodiversity Protection

Go OHNO*1 and Yasushi FUJIWARA*1

研究の目的

環境負荷を伴う事業を行う場合,環境影響を適切に評価することが求められています。建設工事では地形改変工事により環境に大きな影響を与える場合が多く,自然環境を適切に評価した上で設計や施工計画を立案し,工事を進めていくことが重要になります。自然環境の評価手法に関する研究開発は,国,大学,企業の研究機関で進められており,実際の事業に適用されつつあります。本研究は,自然環境に関する事象を定量的に扱うことで自然環境の状態を視覚的に把握し評価するものです。評価結果は,自然環境保全に配慮した設計・施工計画等に活用できます。

技術の説明

評価手順は①対象地の自然環境に関する現存植生分布、土壌分布等の事象を点数化(自然度)、野生生物の生息環境の適性を点数化(HSI:Habitat Evaluation Procedure)、②GISによる各事象の相互の関連性を把握、③重ね合せ(統合評価)です。評価図は色分けできるため、自然の豊かさの現状を容易に視覚的に把握できます。また,自然環境の各事象をどの程度優先するかに応じて重みを付けた評価も可能です。

主な結論

本研究を当社技術センター(左上図)および神奈川・東京エリア(右上図)に適用し評価しました。当社技術センターの評価では,自然が豊かであるエリアを明示できました。神奈川・東京エリアの評価では,図中の破線が示すように,生態系にとって非常に重要なコリドー(野生生物の移動に配慮した連続性のあるネットワーク)を確認できました。結果は,保全すべきエリアに留意した工事用道路,資材ヤード等の配置計画や施工中の自然環境の保全度合いを把握するツールとして活用できます。今後は,建設工事現場のような局所的な範囲において,対象地特有の自然環境を考慮した自然度や対象地に生息する小動物のHSIモデルを評価していく予定です。

*1 技術センター 土木技術研究所 水域・生物環境研究室