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浚渫ヘドロを用いた大規模造成干潟の底質と底生生物の特性について

高山 百合子*1・片倉 徳男*1・国分 秀樹*2

Properties of Sediment and Benthos in Man-made Tidal Flats Mixed with Dredged Sediment

Yuriko TAKAYAMA*1, Norio KATAKURA*1 and Hideki KOKUBU*2

研究の目的

沿岸域に広がる干潟や浅場は,生物が豊富に生息することにより水質浄化や底質の有機物分解など重要な役割を果たしています。しかし,その干潟や浅場は埋立てによる面積の減少に加え,砂質土などの材料不足という問題を抱えています。一方,埋立て処分されていた浚渫ヘドロは,有機物を多く含むことから海域に生息する生物の有用な栄養源となります。そこで当社では,浚渫ヘドロを有効利用して,生物豊かな干潟を造成する技術を開発しました。

技術の説明

浚渫ヘドロを干潟の底質に利用する際,干潟の生物が増えるための最適条件をCODで3~10mg/gDWと定量化し,この条件を設計目標値として三重県英虞湾において7200m2の大規模干潟を造成しました。造成後4年間のモニタリング調査において,地形変化,底質有機物量,生物種類数・個体数の出現状況を調査し,この最適条件の妥当性を確認しました。

主な結論

干潟の生物の生息に最適な底質条件(COD 3~10mg/gDW)を設計目標値とした造成干潟では,生物の種類数と個体数は,造成後約1年で増加し始め,その後,季節変動を繰り返しながら安定し4年後には約4倍まで増加することが実証されました。今後は,干潟や浅場造成に本技術を活用し生物豊かな沿岸域環境の再生に役立てていく予定です。

*1 技術センター 土木技術研究所 水域・生物環境研究室
*2 三重県水産研究所