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窒素ガスを用いた有機浄化資材の効率的な注入方法の検討

脱酸素注水バイオスパージング工法の実証試験

太田 綾子*1・高畑 陽*1・伊藤 雅子*1・大石 雅也*2・今村 聡*1

An Efficient Injection Method for Organic Materials Enhanced by Nitrogen Gas Sparging

A Field Experiment of Flushing and Biosparging Using Non-Oxygen Gas

Ayako OHTA*1, Yoh TAKAHATA*1, Masako ITO*1, Masaya OHISHI*2 and Satoshi IMAMURA*1

研究の目的

トリクロロエチレンなどのクロロエチレン類によって汚染された帯水層を浄化する技術として,有機資材を供給することにより嫌気性微生物の脱塩素化を促進させる原位置バイオレメディエーションが実用化されています。効率良く浄化を行うためには,低濃度の即効性有機資材を広範囲に迅速に供給する必要があることが既往の研究により示されています。しかし,特に透水性の低い地盤では,注入井戸やその周辺地盤で目詰まりが生じることが問題となっています。そこで,注水バイオスパージング工法による有機資材の注入特性を実地盤で検証しました。

技術の説明

脱酸素注水バイオスパージング工法は,1本のスパージング井戸からクロロエチレン類の気化を促進させる気体と,微生物活性を高める有機資材を含む液体(栄養水)を同時に注入して汚染地盤を浄化する原位置バイオレメディエーション技術です。クロロエチレン類を浄化対象とする場合には,地盤内を嫌気環境に保つため,酸素を含まないガス(通常は窒素ガス)を使用します。本工法は,クロロエチレン類の気化促進による物理的回収を実施しながら,微生物浄化に必要な有機資材を注入できるため,高濃度汚染域に対しても短時間で浄化を行うことが可能です。

主な結論

実地盤で注入試験の結果,従来工法(自然浸透注入工法)と比較して有機資材の注入効率が高くなることを確認しました。特に透水性の低いシルト層では,井戸スクリーン部における目詰まり発生を抑制しつつ,自然浸透工法の約3倍の注水効率を確保できることがわかりました。また,脱酸素ガスとして窒素ガスを用いることにより,帯水層を嫌気微生物の脱塩素化に適した嫌気環境を形成し易くなり,クロロエチレン類の脱塩素化が促進されました。本実証試験により,安価な即効性有機資材を用いてクロロエチレン類を効率的に浄化できることが実証されています。

*1 技術センター 土木技術研究所 地盤・岩盤研究室
*2 環境本部 土壌・環境事業部