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濡れたネットによる施工現場の暑熱環境緩和に関する研究

実測調査による暑熱緩和効果

梅田 和彦*1・矢島 清志*2・杉山 由子*2・奥畑 浩一郎*2・守田 進*3・寺崎 透*4・伊藤 永三郎*4

Investigation on Mitigation of the Thermal Environment in Construction Sites by Wetted Nets

Field Measurements of the Evaporative Cooling Effect

Kazuhiko UMEDA*1, Kiyoshi YAJIMA*2, Yoshiko SUGIYAMA*2, Koichiro OKUHATA*2, Susumu MORITA*3, Toru TERASAKI*4 and Eizaburo ITO*4

研究の目的

 我が国の大都市では,ヒートアイランド現象が大きな社会問題となっています。建設工事現場においては,屋外もしくは空調設備のない建物での作業のため熱中症になりやすく,作業員の健康管理のための暑熱対策が重要です。真夏日や熱帯夜の日数が東京や名古屋よりも多く,ヒートアイランド現象が全国で最も深刻な場所である大阪では,熱中症患者の搬送者数も毎年100人を越えています。
本研究では,ヒートアイランド現象が最も深刻な大阪市中心市街地にある施工現場において,屋外暑熱環境の緩和を目的として,工事で使用する化学合成繊維製ネットの全面を濡らす方法で施工環境の改善を試みました。

技術の説明

 仮囲いの現場側に工事用ネットを張り,ネット最上部から地盤掘削工事で発生した地下水を再利用して流します。水はネットを伝って流れ落ち,気化熱で周囲の気温を下げます。その結果,ヒートアイランド対策や熱中症対策として,仮囲い周辺にクールスポットを創出します。(特許出願済み)

主な結論

 2008年夏季に実測した結果,水のカーテンで安全通路の気温が約1.5℃低下し,体感指標のSET*も約1.5℃低下したことを確認し,作業環境が改善することがわかりました。
【謝辞】本研究を進めるにあたり,積水ハウス(株)と(株)鴻池組の関係者の方々には多大なるご協力を戴きました。

ここに記して深く感謝いたします。

*1 技術センター 建築技術開発部 建築生産技術開発室
*2 関西支店 積水ハウス御堂筋本町ビル新築工事作業所
*3 関西支店 建築部
*4 建築本部 建築部