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無響室用薄型吸音構造に関する研究

増田 潔*1・三宅 清市*2

Study on Thin Sound-absorbing Structure for Anechoic Rooms

Kiyoshi MASUDA*1 and Seiichi MIYAKE*2

研究の目的

従来の無響室の吸音構造にはグラスウールのような多孔質吸音材料を用いた吸音楔や積層構造のものがありますが,どちらにしても,吸音効果を十分に得たい最低音の波長の1/4程度の厚さが必要でした。したがって,低い周波数まで十分な吸音性能を得ようとした場合,吸音構造が厚くなり,その分無響室内の有効寸法が減少するという問題がありました。そこで,従来の半分程度の厚さで同等の性能を得ることを目標として,まず,測定対象周波数が200Hz以上の無響室用薄型吸音構造を開発しました。

技術の説明

吸音材の厚さを抑制するために,膜振動を利用した低周波吸音材を用い,さらに,広帯域で高い吸音率を確保するために,その上に吸音材を積層する構造を採用しました。低周波吸音材の上に積層されたグラスウールは,中・高音域の吸音だけでなく低周波吸音材の吸音のピーク周波数をより低い周波数にシフトさせる効果があり,従来の吸音構造の半分の厚さで同等の吸音性能を得ることができます。

主な結論

200Hzをカットオフ周波数とした薄型吸音構造を使用して半無響室を施工し,半無響室としての適性試験をJIS Z 8732に規定されている方法に準拠して行いました。半無響室内は半自由音場に限りなく近い音場であることが要求されるため,その性能は床面に設置された音源から放射される音の距離減衰傾向と,理論値である逆二乗則との偏差で評価されます。試験結果から,室中央から壁面50cm(200Hzの波長の約30%)まで要求性能が満たされていることが確認されました。今後は,さらに低い周波数まで適用可能な構造に改良していく予定です。

*1 技術センター 建築技術研究所 環境研究室
*2 昭和電線デバイステクノロジー(株)