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流木の流出防止を目的とした渓流および谷底河川沿いのケヤキの植林に関する研究

石野 和男*1・濱田 武人*2・佐野 浩一*3・大下 勝史*4・野呂 直宏*5・岡本 宏之*6

Study on Afforestation of The Zelkova in Mountain Stream and Ravine Rivers which Prevent Outflow of Driftwood as Purpose

Kazuo ISHINO*1, Taketo HAMADA*2, Kouichi SANO*3, Katsufumi OOSITA*4, Naohiro NORO*5 and Hiroyuki OKAMOTO*6

研究の目的

近年,河岸浸食や斜面崩壊に起因した流木の流出が多発しています。2004年10月には,岐阜県の宮川に観測史上最高流量の洪水が発生しました。この洪水では,本川の側岸に生えていたケヤキは洪水に耐えて流出せずに背後のスギ林の流出を防いでいました。同年9月には,三重県の宮川に観測史上最高流量の洪水が発生しました。この洪水では,支川の土石流発生区間の側岸に生えていたケヤキは洪水に耐えて,流木を補足しました。このような状況から,近年多発している流木の発生を抑制するために,川沿いにおけるケヤキの植林が有効であるかの判断を目的に,ケヤキの植林の歴史,ケヤキの繁殖状況等を調査しました。なお,ケヤキの植林が有効となれば,コンクリート等を用いない自然にやさしい流木流出防止工法が実現されることになります。

技術の説明

河岸にケヤキを植林して流木の流出を防止することにより,コンクリート等を用いない自然にやさしい流木流出防止工法が実現されることになります。

主な結論

2004年10月岐阜県の宮川洪水,同年9月三重県宮川水害後の現地調査によりケヤキの流木の抑制効果・耐洪水特性・維持管理の必要項目を示しました。また,信玄堤におけるケヤキを用いた水害防備林,金沢城におけるケヤキ等を保護した七木の制の伝承,飛騨宮川町におけるケヤキを用いた鉄道防雪林,長野大鹿村・山梨稲山の森・東京深大寺におけるケヤキの繁殖状況から,ケヤキは古くから治水・地山対策に応用されて来たことが示されました。さらに,ケヤキの繁殖状況から,流木の流出防止林の最短必要間隔である4mを確保して植林が可能であることを示し,ケヤキの流木の流出防止への応用が可能であることを示しました。

*1 技術センター 土木技術研究所 水域・生物環境研究室
*2 濱田技術士事務所
*3 元岐阜県高山市立本郷小学校
*4 岐阜県自然保護員
*5 三重県大台町役場
*6 宮川森林組合