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関東・濃尾・大阪平野での長周期地震動シミュレーション

2004年紀伊半島南東沖地震による検証と想定東海・東南海連動地震の予測

吉村 智昭*1・山本 優*1・七井 慎一*2

Long-period Earthquake Ground Motion Simulations for the Kanto, Nobi, and Osaka Plains and Surrounding Regions

Verification by the 2004 Off the Kii Peninsula Earthquake and Prediction for the Tokai-Tonankai Earthquake

Chiaki YOSHIMURA*1, Yu YAMAMOTO*1 and Shinichi NANAI*2

研究の目的

21世紀中頃にも起こると考えられている東海地震・東南海地震・南海地震といった巨大地震では,長周期地震動が発生すると考えられます。長周期地震動は,遠方の平野まで減衰せずに伝播し,平野の堆積地盤の三次元構造により複雑に増幅され,超高層ビル,長大橋,石油タンク等の固有周期の長い構造物を大きく揺らすと予測されます。超高層ビルの設計や制震補強などの検討用地震動として,これら巨大地震の長周期地震動を精度良く算定しておくことは重要です。

技術の説明

本技術は,平野規模の地盤をモデル化し,大規模有限要素法(FEM)により,巨大地震の地震波が複雑に伝播する様子をスーパーコンピューターで数値シミュレーションする技術です。我が国の三大都市圏であり,多くの重要構造物が立地する,関東,濃尾,大阪平野を含む大領域の地盤モデルを構築しました。

主な結論

三大平野を含むモデルを用いて,2004年紀伊半島南東沖地震前震の長周期地震動のシミュレーションを行いました。計算結果は,観測記録の長い継続時間や,平野における地震動の増幅,およびスペクトル特性を良好に再現することができ,構築したモデルが信頼できるものであることを確認しました。このモデルを用いて,想定東海・東南海連動地震のシミュレーションを行いました。関東平野,濃尾平野,大阪平野の中心部で,全国一律に用いられる告示スペクトルを上回る長周期地震動が計算されました。ここで得られた長周期地震動を超高層ビルなどの設計に反映させることが重要だと考えられます。

*1 技術センター 建築技術研究所 防災研究室
*2 技術センター 技術企画部 情報技術室