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レーザによる石床材の防滑処理工法の実用化

レーザノンスリップ工法

永井 香織*1・シバクマラン ウィグナラージャ*1・住吉 文夫*2

Practical Use of Non-Slip Processing of Stone Flooring with Laser

Laser Non-Slip Processing

Kaori NAGAI*1, Sivakumaran WIGNARAJAH*1 and Fumio SUMIYOSHI*2

研究の目的

近年,滑りによる転倒事故は,毎年約850万人が怪我,3500名以上が死亡事故に繋がる大きな問題となっています。
防滑対策としては,床材を貼り替える,既設の床材に防滑処理を施す,の2種類があります。環境問題と安全問題の点から,既存の床を有効利用し,防滑効果を持たせることは,急務の課題です。このような背景を踏まえ,本研究は,新築時の床材の意匠性を残しながら既設床材に防滑性能を付加できる工法の開発を行いました。本工法は,世界で始めて,レーザ光を用いた可搬式加工機を開発,無振動無騒音工事を実用化したものです。

技術の説明

レーザノンスリップ工法は,レーザ光を用いて石材表面を局所的に600℃以上に瞬間過熱瞬間冷却を行うことで,微細な窪みを形成し,防滑効果を得る処理方法です。新築・既存建物に適用ができ,下記の特徴があります。
1)石材表面は,既存の磨き石材の風合いを保ちながら,希望のデザインを選定し,防滑効果を得る。
2)防滑設計は,隣接する床材などを考慮し,滑り抵抗値CSR0.4以上で,希望の防滑効果を計画。
3)可搬式加工機は,養生が不要で無振動無騒音の工事が可能なため,昼間施工を実現。

主な結論

レーザノンスリップ工法は,約1000m2の実績があり,東京都内駅コンコースに適用され,施工後3年経過しても防滑性が保持されています。技術に関する優位性は以下のとおりです。
1)レーザノンスリップ工法は,花崗岩,大理石,テラタイルに適用でき,意匠的に防滑性を付与できます。
2)表面の窪みは,50~180μm程度と自由に設定でき,防滑性能は,東京都の指針CSR0.4以上を確保します。
3)耐久性は,計画的に設計が可能で,バーナ処理と同程度の耐久性能が期待できます。
4)施工は,養生が不要で無振動・無騒音施工のため加工直後からすぐに使用でき,バーナ処理時の粉塵騒音の問題や,薬剤処理時の養生と大量水の使用などの心配がありません。

*1 技術センター 建築技術研究所 構工法研究室
*2 建築本部 リニューアル部