コンクリート中の鋼材の腐食発生限界塩化物イオン濃度
コンクリート構造物の塩害耐久性設計の高精度化に向けて
Chloride Threshold Values for Corrosion of Steel Bars in Concrete
Durability Design of Concrete Structures for Salt Attacks with Highly Accurate Estimates
研究の目的
コンクリート中の鋼材は,塩化物イオンが外部から浸透し,鋼材表面での濃度が一定量に達すると腐食することが知られています。現状では,この腐食発生限界塩化物イオン濃度を1.2kg/m3で一定とし,セメントの種類や配合条件などが考慮されていません。しかし,RC構造物の塩害に対する耐久性をより高精度に照査するためには,この値をより適切に設定することが望まれています。本研究は,この値を具体的に設定することを目的としました。
技術の説明
腐食発生限界塩化物イオン濃度を適切に設定するためには,コンクリート中の鋼材の腐食発生時点が明確にわからなくてはなりません。本研究では,供試体内部に照合電極を埋設し,腐食状態と相関のある自然電位を10分ごとに連続モニタリングしました。これにより,腐食発生時点で自然電位が急激に低下し,コンクリート中の鋼材に腐食が発生したことを非破壊で明確にとらえられることに成功しました。この時点で鋼材表面の塩化物イオン濃度を測定することで,鋼材に腐食が発生する腐食発生限界塩化物イオン濃度の定量化が可能となりました。
主な結論
普通セメントのみの供試体では,単位結合材量を254,291,362 kg/m3と3通りに変化させたところ,腐食発生限界塩化物イオン濃度は,1.6,2.5,3.0kg/m3となりました。また,普通セメントのうち,50%を高炉スラグ微粉末に置換した供試体では,単位結合材量264 kg/m3に対し,腐食発生限界塩化物イオン濃度は1.6 kg/m3となりました。
*2 鹿児島大学大学院 理工学研究科 海洋土木工学専攻