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画像解析技術のトンネル覆工ひび割れ調査への適用

ウェーブレット変換を用いた画像解析t.WAVEでひび割れ調査の高度化

小山 哲*1・丸屋 剛*1・堀口 賢一*1・澤 健男*2

Using Image Analysis to Investigate Cracks in a Tunnel Lining

Image Analysis Technology "t.WAVE" using a Wavelet Transform

Satoru KOYAMA*1, Tsuyoshi MARUYA*1, Kenichi HORIGUCHI*1 and Takeo SAWA*2

研究の目的

コンクリート構造物の点検業務で一般的に実施されている目視観察に代わって,コンクリート面をデジタル撮影して画像処理によりひび割れを評価する技術が期待されています。今回,画像処理手法の効率化と高精度化を目的に,ウェーブレット変換を用いた画像処理技術により,ひび割れ検出精度や処理作業の効率化を従来の画像処理に比べて大幅に向上したひび割れ検出技術を開発しました。本手法をトンネル覆工コンクリートのひび割れ調査に適用し,ひび割れ評価の検証を行い,その有効性を確認しました。

技術の説明

撮影画像にウェーブレット変換を施し,コンクリート表面のひび割れを検出します。ウェーブレット変換は,周波数解析の一手法であり,撮影画像の局所的な輝度情報を周波数と方向成分に分解してひび割れを検出する方法です。本手法は,画素の輝度を閾値としてひび割れを判定する従来の画像処理手法に比べて,人為的な判断を介さないで自動処理で高精度なひび割れを検出することが可能です。また,検出されたひび割れ情報を,CADソフトや可視化ソフトを用いて,簡単にひび割れ展開図や透視図の形式で表示することができます。

主な結論

トンネル覆工表面を空間分解能1.5mm/pixelで撮影した画像データを解析した結果,0.3mm以上の幅のひび割れを検出することができました。本手法によれば,目視観察や撮影画像からトレースした方法に比べて,ばらつきも少なく定量的かつ高精度なひび割れ評価が可能です。また,ほとんどの処理を自動で行うことができ,作業の効率化を図ることができます。今後,トンネル覆工をはじめとして多くのコンクリート構造物のひび割れ調査に適用していく予定です。

*1 技術センター 土木技術研究所 土木構工法研究室
*2 国土交通省 関東地方整備局