53

石灰石粉末懸濁水を利用した黄鉄鉱含有掘削ずりに起因する硫酸酸性水の発生抑制方法

城 まゆみ*1・山本 肇*1・青木 智幸*1・今村 聡*1

Lime Slurry Neutralization of Sulfuric Acid Resulting from Oxidation of Pyrite in Piles of Excavated Rocks

Mayumi JO, Hajime YAMAMOTO, Tomoyuki AOKI and Satoshi IMAMURA

研究の目的

日本列島に広く分布している堆積岩中には,黄鉄鉱という鉱物がしばしば含まれています。黄鉄鉱は,地中の還元環境のもとでは安定していますが,地表の酸化環境に曝されると,酸化溶解反応によって硫酸を生成します。
トンネル掘削等で発生した黄鉄鉱を含有する掘削ずりは,掘削直後の場合には硫酸の生成量が少ないため,掘削ずり中から硫酸が硫酸酸性水として外部に滲出しても,周辺環境の酸性汚染が顕在化することは稀でした。しかし,環境保護のためには,対策を講じる必要があります。
そのため,黄鉄鉱含有掘削ずりから発生した硫酸酸性水に対する事後対策を,今回新たに開発し,実用化に向けた研究を進めています。

技術の説明

石灰石粉末懸濁水注入法は,黄鉄鉱含有の掘削ずりを無対策で盛土(または,埋土)したことにより発生した硫酸酸性水抑制のための事後対策です。硫酸酸性水の発生を抑制する必要のある領域に,ボーリング孔等を利用して,石灰石粉末の懸濁水を注入し,対象領域を中和します。石灰石を使用することの長所としては,多量に施用してもpHは8~9程度の上昇で止まるために,施用後に周辺環境をアルカリ汚染する可能性がないことが挙げられます。

主な結論

・掘削ずりと石灰石粉末が十分に混合している条件では,混合物のCa/S(モル比)で0.5以上確保することにより,中和効果を期待できます。
・石灰石粉末懸濁水を地盤に注入する条件では,石灰石粉末の充填状況の偏りを考慮し,石灰石粉末の増量,懸濁水濃度の調整など,注入方法を工夫する必要があることがわかりました。
今後は,長期耐久性を屋外実験などで確認する予定です。

*1 技術センター 土木技術研究所 地盤・岩盤研究室