インドネシア国内における緩行性肥料を用いた海浜漂着油のバイオレメディエーション試験
Field Bioremediation Test for Petroleum-contaminated Marine Beach using Slow Release Fertilizer in Indonesia
研究の目的
インドネシア海域は多数の石油タンカーの航路となっており,タンカーからの油漏洩事故により沿岸域が汚染される危険性が高い地域です。油で汚染された海浜の浄化方法として,周辺環境への負荷や浄化コストを小さくすることが可能なバイオレメディエーション技術が着目されています。弊社は独立行政法人製品評価技術基盤機構(NITE)とインドネシア科学院(LIPI)との国際共同研究により,インドネシア海浜にバイオレメディエーション技術を適用することを目的とした実証試験を行い,浄化技術の確立を目指しています。
技術の説明
油で汚染された海浜の浄化方法として,石油分解菌の活性を高める栄養塩を継続的に供給することができる緩行性肥料を汚染域に散布します。緩行性肥料の効果を確認するため,ジャカルタ湾沖のパリ島の環礁内に設置したコンクリート管内に,模擬汚染海浜として油混じりの海砂を充填したカラムを複数本設置し,緩行性肥料を添加することによる海砂に付着した油分の浄化効果と油の鉛直方向への拡散性について調べました。
主な結論
緩行性肥料を添加した条件では,自然潮汐によりカラム内に海水が供給される毎に海砂間隙水中に栄養塩が供給され,石油分解菌による油分解が促進されました。試験開始1ヶ月後の海砂に残存した油分を解析した結果,分解された油分の多くが原油の主成分であるノルマルアルカンであることがわかりました。また,緩行性肥料の添加による副作用として懸念される油の地中方向への拡散は生じないことが確認されました。年間を通じて海水温が高い本地域では,微生物による油分解が短時間で進行するため,本浄化技術の適用効果が高く実用化が期待されます。
本研究では、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)から委託を受けて実施しています。