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ポリ塩化ビフェニル汚染土壌の脱塩素無害化技術に関する研究

常温常圧下でのオンサイト処理技術の実用化研究

根岸 昌範*1・深澤 道子*1・中島 秀也*2・樋口 雄一*2・鈴木 健二*3・今村 聡*1

A Study on Dechlorination Techniques of Polychlorinated Biphenyls in Contaminated Soil

A System for On-site Treatment of PCB-contaminated Soils under Ambient Conditions

Masanori NEGISHI, Michiko FUKASAWA, Hideya NAKAJIMA, Yuichi HIGUCHI, Kenji SUZUKI and Satoshi IMAMURA

研究の目的

近年,国際的な難分解性有機化合物に対する意識の高まりとともに,PCB廃棄物(PCB原液)に対しては,わが国でも無害化処理が推進されています。一方,低濃度で大量に存在するPCB汚染土壌に対しては,より温和な条件下でオンサイト処理可能な技術が望まれています。常温常圧下でオフガスも発生しないPCB汚染土壌の脱塩素無害化処理技術として,土壌洗浄と超音波電気分解の組み合わせ技術について実用化研究を実施しました。

技術の説明

土壌洗浄工程では,PCB汚染土壌に対して1%界面活性剤溶液を添加し,PCBを土壌から液相に抽出します。数回繰返し洗浄することで,清浄な処理土壌が得られます。PCBを含んだ洗浄液は電気分解工程に送られ,PCBに含まれる塩素を水素に置換する脱塩素作用により無害化されます。PCBを90%以上電気分解処理した洗浄液は抽出溶媒として繰返し再利用し,最終的に系外へ放流する際には法定基準以下まで処理します。なお,電気分解処理では電気分解中の処理槽温度が数10度に上昇するだけでオフガスなども発生せず,特殊な薬品を使用することもありません。オンサイトの小型可搬処理システムとして受け入れられやすい技術だと考えます。

主な結論

土壌洗浄工程ではPCB含有濃度2,850mg/kgの実汚染土壌を使用した試験で,4回繰返し洗浄することで100mg/kg未満まで土壌濃度を低減することができました。また,粘性分を多く含むような場合には事前の分級処理などを施すことで同等の処理性能が得られました。電気分解工程では,抽出薬剤として使用した界面活性剤の共存が分解速度を低下させることが判りましたが,電解条件を工夫し電流密度を上げることで実用的な分解反応速度(3時間以内に90%以上の処理効率)を維持することが可能でした。

*1 技術センター 土木技術研究所 地盤・岩盤研究室
*2 エコロジー本部 土壌・環境事業部
*3 (株)エイ・アイ・ティー