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オフィスビルリニューアル後の2年間における室内化学物質の挙動

市原 真希*1・市原 英樹*2・洞田 浩文*1・深尾 仁*1

Indoor Air Quality in the Two Years after Office Building Renewal

Maki ICHIHARA, Hideki ICHIHARA, Hirofumi HORATA and Hitoshi FUKAO

研究の目的

本報告は,オフィスビルの内装リニューアル工事後の室内化学物質を測定し,2年間における挙動をまとめたものです。室内化学物質は,厚生労働省指針化学物質6物質とTVOC(総揮発性有機化合物)です。TVOCについては,厚生労働省指針化学物質とそれ以外の化学物質がどのような割合となっているのか,内装仕様の違いおよび居住直後と居住2年後での違いによりその割合はどのように変化しているかについて解析しました。

技術の説明

今回調査を行ったオフィスビルは,建築面積2,348m2,延べ床面積6,409m2,地下1階,地上4階のRC造の事務所ビルです。測定は,建物竣工後に居住直後,居住1ヵ月後の測定を行い,その後,約6ヶ月間隔で合計17箇所について測定を行いました。測定物質は,ホルムアルデヒド,トルエン,キシレン,エチルベンゼン,スチレン,パラジクロロベンゼンの6物質とTVOCです。

主な結論

ホルムアルデヒド濃度は,経過年数と共に室内温度が高いと濃度が上昇し,室内温度が低いと濃度が減衰するという傾向を繰り返して推移していますが,経過年数による顕著な減衰量は把握できませんでした。トルエン濃度,キシレン濃度,TVOC濃度は,温度依存の傾向は見られませんでした。TVOC濃度が居住直後に高い測定室について,厚生労働省指針化学物質とその他のVOCの割合を見ると,後者が高い測定室が多いことがわかりました。TVOCを低減するには,その他のVOCの発散量も把握し,適切な対策を行うことが重要です。

*1 技術センター 建築技術研究所 環境研究室
*2 技術センター 建築技術開発部 建築生産技術開発室