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水平噴流式煙制御システムに関する実験的研究

実規模実験による遮煙および換気効果の分析

中濱 慎司*1・原 哲夫*2・嵐城 太郎*3・山名 俊男*4・小林 裕*1・樋渡 潔*5

Experimental Study of Smoke Control System using Horizontal Air Jet

Analysis of Effects of Air Supply and Air Changes on Smoke Leakage through Full-Scale Experiments

Shinji NAKAHAMA, Tetsuo HARA, Taro ARAKI, Toshio YAMANA, Yutaka KOBAYASHI and Kiyoshi HIWATASHI

研究の目的

大深度地下利用法の施行(2001年4月)や韓国大邱(テグ)での地下鉄火災事故(2003年2月)を契機に,地下空間の防火対策への関心が高まっています。地下空間は避難方向と煙の移動方向が同じであり,また鉄道利用客といった大量の避難者が存在するなど,多くの危険性を有しています。
本システムは,大量の避難者を安全かつ迅速に避難させることを目的に,従来の防排煙設備と異なる空気膜による遮煙技術の開発を行いました。

技術の説明

・従来の加圧防煙設備は,壁や扉などで区画された空間に空気を送りこみ,空間の圧力を隣室より高くすることで,煙の侵入を防ぐシ ステムです。しかし,遮煙性能の確実性,扉の開閉障害などの課題がありました。
・本システムでは,避難通路の両壁から水平に空気を吹出して空気膜を形成するため,避難者の通行の妨げとなる扉や垂壁・袖壁がな くなり,また設備的にも圧力調整ダンパーが不要となります。
・実規模実験により,空気膜内に障害物がある場合でも,遮煙効果が確保できることを確認しています。
・防護空間内の気流は静穏状態であり,避難者への影響はほとんどなく,安全な環境条件を維持できます。

主な結論

実建物の設置を想定した吹出ユニットを開発し,独立行政法人建築研究所内の実規模実験室内に設置しました。そして,メチルアルコールの燃焼やガスボンベからのCO2ガスをトレーサーガスとして用い,本システムの遮煙効果の実験を行いました。その結果,本システムは火災室から防護空間への煙の侵入を防ぐ遮煙効果と,防護空間内の空気を置換する換気効果を有することが分かりました。今後,多数の駅利用客が滞在する地下駅ホームなどの階段部,物販店舗などの通路,災害時要援護者が滞留する病院などの乗用ELVホールや前室などへの適用を目指しています。

*1 技術センター 建築技術研究所 防災研究室
*2 設計本部 設備計画グループ
*3 設計本部 設備グループ
*4 国土交通省 国土技術政策総合研究所
*5 技術センター 建築技術研究所 環境研究室