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火災時のガラスの挙動に関する研究

池畠 由華*1・小林 裕*1・道越 真太郎*1・中村 正寿*1・栗岡 均*2・大内 富夫*2・宮本 圭一*2・桑名 秀明*2・西村 光太*2

A Study on the Behavior of Glass Exposed to Fire

Yuka IKEHATA, Yutaka KOBAYASHI, Shintaro MICHIKOSHI, Masatoshi NAKAMURA, Hitoshi KURIOKA, Tomio OHUCHI, Keiichi MIYAMOTO, Hideaki KUWANA and Kouta NISHIMURA

研究の目的

現状の建築物における火災時の性能検証では,ガラスの火災時の性状を考慮せずに評価を行っています。具体的には,避難安全性能評価ではフロートガラスによる間仕切りは初めからないものとして取り扱うため,隣接空間で避難者が煙にまかれる時間が早く算出されます。また,耐火性能検証では網入ガラスは火災時に開口として見込まないため,網入ガラスを開口に用いている室では熱がこもり,結果として長時間の耐火性能が要求される評価結果となります。本研究では火災時のガラスの性状を組み込んだ安全で合理的な設計を行うために,初期火災時のフロートガラス,盛期火災時の網入ガラスの挙動について把握しました。なお,本研究は大成建設と鹿島建設との共同研究です。

技術の説明

本研究では建築物の避難安全性能検証を行うためのフロートガラスの遮煙性能や,耐火性能検証を行うための網入ガラスの脱落時間,脱落面積等の検証用データをガラスの加熱実験により収集しました。加熱は放射加熱,ガスバーナー,耐火炉による直火加熱によって行っています。合理的な設計を行うために,これらのデータを取り入れた設計手法を構築する予定です。

主な結論

フロートガラス加熱実験結果より,特に飛散防止フィルムを貼ったガラスは初期火災時の遮煙効果が高く,隣接空間への煙の流出を数分間は防止できることが確認できました。また,網入ガラス加熱実験結果より,網入ガラスは非加熱面温度が約600℃になった時点で脱落することが明らかとなりました。この結果を火災継続時間の算定に考慮することで要求される耐火時間を短くすることが可能となります。

*1 技術センター 建築技術研究所 防災研究室
*2 鹿島建設(株) 技術研究所 都市防災・風環境グループ