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弾性すべり支承用耐火被覆システムの開発

水野 敬三*1・倉本 真介*2・道越 真太郎*1・関 清豪*2・佐藤 芳久*3・谷田貝 健*2・磯部 共伸*2・亀田 龍吉*4

Development of Fire Protection System for Elastic Sliding Bearing

Keizou MIZUNO, Shinsuke KURAMOTO, Shintaro MICHIKOSHI, Kiyohide SEKI, Yoshihisa SATOH, Ken YATAGAI, Tomonobu ISOBE and Ryukichi KAMEDA

研究の目的

建物の中間階に免震装置を設置する場合,免震装置を設置した柱は耐火構造でなければなりません。積層ゴム支承や高減衰ゴム支承等の免震装置では耐火構造の大臣認定を取得した耐火被覆があります。しかし,弾性すべり支承では加熱試験データに基づく耐火設計ルートCによってボードタイプの耐火被覆を設置しています。このシステムでは被覆が大型になる,地震時に被覆材が損傷する可能性がある,分解・点検作業が困難である等の欠点がありました。当社は,これらの欠点を解消した弾性すべり支承用耐火被覆システムを開発し,その性能を確認しました。

技術の説明

開発した耐火被覆システムは,弾性すべり支承の周囲をALC版で覆うことで,従来品よりもコンパクトな納まりになっています。また,支承下部のすべり板をカバーする耐火ブランケットをすべり板よりも大きくすることで,地震後に変位が残留した場合でもすべり板は露出しないため,耐火性能が保たれます。さらに,本システムは市販の部材で組み立てられているので,分解・点検および補修作業が容易であるという利点もあります。

主な結論

開発した耐火被覆システムについて各種実験を行い,以下のことを確認しました。
 (1) すべり板をカバーする耐火ブランケットが壁に衝突しても変位追従性と復元性が保たれます。
 (2) 本システムを適用した弾性すべり支承免震装置を含む柱は3時間の耐火構造の性能を有します。
 (3) 火災後の補修期間における弾性すべり支承の使用に対する構造安全性の検討データが得られました。

*1 技術センター 建築技術研究所 防災研究室
*2 設計本部 構造グループ
*3 東北支店 設計部
*4 建築本部 技術部 建築技術部