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歴史的建築物補強のための連結屋根制震システムの開発

新居 藍子*1・欄木 龍大*1・長島 一郎*1・糸井 達哉*1・西川 泰弘*2・鈴木 裕美*3・豊田 祥之*3

Interaction Control System for Seismic Retrofitting of Historical Buildings

Aiko NII, Ryota MASEKI, Ichiro NAGASHIMA, Tatsuya ITOI, Yasuhiro NISHIKAWA, Yumi SUZUKI and Yoshiyuki TOYODA

研究の目的

都市再開発事業においては,保存すべき歴史的建築物に隣接させて超高層建物を建設する例が見られます。そのような歴史的建築物の耐震補強に適用可能な,建物と建物を屋根架構とオイルダンパーによってつなぐ連結屋根制震システムを開発しました。本補強方法では,地震時に生じる2棟間の大きな変形差を利用して,オイルダンパーが建物の振動を効率的に低減させるため,保存すべき建築物自体への補強工事を極力少なくでき,内・外観デザインを生かした補強が可能となります。

技術の説明

歴史的建築物の屋上にオイルダンパーを配置した屋根受け補強を設け,オーバーハングさせた屋根架構と建屋屋上部で接続します。接続部が外壁部分にないため,すっきりとした外観です。屋根架構部分は,オイルダンパーが効率よくエネルギーを吸収できるように,グリッドと水平ブレースを組み合わせて,水平力に対して剛強な架構としています。建物間はアトリウム空間として利用できます。

主な結論

昭和初期に建築された官公庁の歴史的建築物と新築の超高層建物とを本システムにより連結するケースについて,地震時の応答や必要な補強構面数を,通常の鋼材ブレースやオイルダンパーを用いて歴史的建築物を単独で補強する場合と比較しました。その結果,本システムによる連結補強で,歴史的建築物の建物内部の補強を殆ど無くして,耐震性能を十分に高められることがわかりました。

*1 技術センター 建築技術研究所 防災研究室
*2 設計本部 構造グループ
*3 設計本部 耐震計画グループ