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掘削残土を低減した既製コンクリート杭工法の性能試験

石崎 定幸*1・長尾 俊昌*1・渡邊 徹*1

Performance of Waste-Soil Reducing Precast Concrete Pile

Sadayuki ISHIZAKI, Toshiaki NAGAO and Toru WATANABE

研究の目的

近年,環境問題への配慮やコスト縮減の観点から,杭の施工で生じる残土の低減が求められています。残土低減型の杭工法は鋼管杭を対象としたものが主流であり,既製コンクリート杭や場所打ち杭の開発事例は多くありません。今回,既製コンクリート杭を対象とした工法で,従来とは異なる方式により発生残土を低減した杭の施工を行う機会を得ました。本検討では,その工法の残土発生量と施工性,及び支持力性能を把握することを目的としています。

技術の説明

本工法の特徴は,発生残土を低減できることとその支持力性能の高さにあります。発生残土の低減は,先端にテーパーのついた特殊なケーシングを用いて掘削を行い,地盤を側方に圧縮することにより造り出した空間を利用して行っています。支持力性能の高さは,杭の外側に築造した地盤改良体に起因します。この地盤改良体が杭の鉛直支持機構に有効に働き,通常の既製コンクリート杭と比較して,本工法はより大きな鉛直支持力性能を発揮します。

主な結論

今回実施した既製コンクリート杭(直径500mm,長さ10m)の試験施工では,残土が排出されないことが確認されました。その鉛直載荷試験の結果からは,一般的な支持力評価式に対して,3倍程度の周面摩擦力が確認されました。また,シミュレーション解析では,杭外周に築造された地盤改良体の影響を考慮することにより,杭頭の荷重-沈下関係を精度良く評価できることを示しました。

*1 技術センター 建築技術研究所 建築構工法研究室