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太陽光採光システムの開発

太陽光採光システムの概要と適用事例

小林 光*1・藤井 浩史*2

Development of Daylighting System

Outline of System and Application to a Building

Hikaru KOBAYASHI and Hirofumi FUJII

研究の目的

近年、自然光による光環境づくりや省エネルギーを目的とした、積極的な昼光利用の事例が増えています。採光装置を建築空間に適用し,効率よく,多くの光を所望の位置に導くには,建築と採光装置の特性がうまく合った計画が必要です。単に開口部に採光装置を設置しただけでは,十分な光を設計意図通りに導くことが出来なかったり,装置自身が影を落として本来その開口が持つ採光性能を阻害するなど,思わぬ結果となる場合もあります。本開発では建築空間が採光システムに求める性能を検討し,これに応える,出来るだけシンプルな機構で,十分な光を導入するシステムの開発を目指しました。

技術の説明

この採光システムは,吹抜空間等の頂部に設置した太陽追尾型採光装置(1次ミラー)と,機能の異なる導光・放光用ミラー(2次,3次ミラー)で構成されます。1次ミラーは地軸と平行な軸に取付けた,季節毎に角度を自動調整されるミラーを1日1回転することで太陽を機械的に追尾し,複雑な制御なしに太陽光を定点反射します。2次ミラーは反射特性を設計されたフレネルプリズムによる固定ミラーで,反射光を主に縦方向に配光し,3次ミラーは拡散性ミラーによる縦ルーバー状の回転鏡で,主に横方向に配光します。これらの採光と縦横の配光の組み合わせにより,直射日光がある限り,常に建物内に太陽光を導くことを可能としたシステムです。

主な結論

5層の吹き抜空間に適用した1次ミラー16台の事例では,その低層部及び床面照度を大幅に向上し,吹き抜空間周りの照明電力は下層階で3割の削減効果が見込まれます。自然光の利用には,定量化しにくい,心理面,生理面への効果も期待されており,太陽光採光システムが省エネルギーだけではない環境創出デバイスとして機能することが期待されます。

*1 設計本部 設備計画グループ
*2 技術センター 建築技術研究所 環境研究室