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地球シミュレータを用いたCO2地下貯留シミュレーション

山本 肇*1・七井 慎一*2・Keni Zhang*3・丸井 敦尚*4・上原 均*5・西川 憲明*5

Large-scale Simulation of CO2 Geologic Storage on the Earth Simulator

Hajime YAMAMOTO, Shinichi NANAI, Keni ZHANG, Atsunao MARUI, Hitoshi UEHARA and Noriaki NISHIKAWA

研究の目的

大気中CO2濃度の上昇を抑制する地球温暖化対策において,CO2地下貯留技術は最も実用的で即効性の高い技術として期待されています。CO2地下貯留の実現において,貯留事業の経済性や安全性(貯留可能量や漏洩・環境リスク)を正確に評価することが非常に重要です。本研究は,CO2貯留の経済性・安全性を評価するための高精度シミュレーション技術の開発を目的としています。

技術の説明

複数CPUを用いた並列計算により,高速・大規模シミュレーションが可能です.並列計算性能に優れ,地球シミュレータなどの超並列コンピュータも効果的に活用できます。従来の100倍の解像度(国内実績比)の大規模計算により,地下貯留層内のCO2挙動だけでなく,地表まで含めた広域の環境影響や安全性を精度良く解析できます。

主な結論

今回,我が国のベクトル型並列スーパーコンピュータである地球シミュレータ(CPU数5120)において,多相流解析コードTOUGH2-MPの改良と最適化を施しました。その結果,最適化したTOUGH2-MPは,実測性能値(ベクトル化率93.7%,並列化率99.93%)によって,地球シミュレータの性能を生かすことのできる計算コードとして認められました。予備解析(約1000万節点)を達成し,地球シミュレータによる大規模解析は,二酸化炭素の地中挙動と地下水環境影響などの広域的なリスク要因を総合的に検討する上で有効であることが分かりました。

*1 技術センター 土木技術研究所 地盤・岩盤研究室
*2 技術センター 技術企画部 情報技術室
*3 ローレンスバークレー国立研究所
*4 (独)産業技術総合研究所
*5 (独)海洋研究開発機構