ごあいさつ

河村 壮一 画像
河村 壮一

ここに大成建設技術センター報第40号をお届けします。

本年3月には能登半島地震が,7月には新潟県中越沖地震が発生し,地すべりや木造家屋等の被害により死傷者が出たほか,市民生活に大きな影響が生じました。中越沖地震では,自動車部品工場や原子力発電施設なども被災し,産業界は手痛い打撃を受けました。被災者の方々には,心よりお見舞い申し上げます。

今後発生が危惧されている首都圏直下地震や東海・東南海・南海地震等の大地震および予期せざる地震に対して,安全確保・機能維持のための事前対策を実施し,人々の命と生活および産業基盤を地震被害から守る必要があります。災害に強い国づくりを進めることは,日本が健全な国家として国際社会の中で確かな地位を築き,持続的な発展を続けていくうえで必須の課題です。私ども建設業としても,もてる技術力を存分に発揮して皆様のお役に立つ所存です。

高度成長期に整備された構造物やインフラは,いまやその多くが高齢化しています。新規の建設投資が減少を続ける中,老朽化した社会資本の補強・整備は国力の維持のために不可欠であり,そのための投資は右肩上がりで伸びています。その際,循環型社会構築の視点から3R(リデュース,リユース,リサイクル)を重視するとともに,新しい価値を創造すべく最適投資をすることが望まれます。

弊社技術センターは昭和54年に現在の地に居を構えて以来28年余りが経過しました。老朽部分を更新し新たな機能を付与することにより,時代に適合した研究開発環境に甦らせることとし,業務を継続しながら本館の「リニューアル(リノベーション)」を実施しました。解体新築案もありましたが,投資効率や地球環境保全の観点からこの方法を採用しました。

このたびのリニューアルでは,開かれた躍動的な研究開発活動を標榜し,「Open & Dynamic」をキャッチフレーズとしました。また,(1)コミュニケーション(分野間の連携と融合)(2)セーフティ&セキュリティ(安全・安心な職場)(3)サステナビリティ(快適で持続可能な環境)という三つのコンセプトのもと,創造性豊かな魅力溢れる研究開発環境を創生するため,多くの新技術を駆使しました。

本館のロビーには,大きな青い地球儀と角型の熱帯魚水槽が置かれています。これは,研究開発において常にグローバルな視点を持ち地球環境保全に積極的に取り組む私達の姿勢をシンボリックに表現しています。「水は方円の器に従う」との謂われにも通じます。人は環境を造り,環境は人を創ります。皆様,ぜひご来訪いただき,これからの研究所のあり方を体験して下さい。

当技術センター報第40号では,今回適用した11の新技術をご紹介すると共に,建築・土木分野の「リニューアル技術」をテーマとして特集を組みました。皆様におかれましては,この技術センター報をご高覧いただき,ご指導ご助言を賜りますとともに,ご活用いただくようお願いいたします。

2007年11月