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プレスリリース

アスベストを現場で溶融処理

− 安全で省エネルギーのオンサイト溶融処理システム −

2011年5月18日

独立行政法人 産業技術総合研究所
大成建設株式会社

■ ポイント ■
・集光加熱法で1500℃程度の高温場を得られるオンサイト型の集光加熱溶融装置を開発
・オンサイト型集光加熱溶融装置とアスベスト廃棄物成形技術のシステム化により除去現場などで処理が可能
・実際のアスベスト廃棄物溶融に成功し、オンサイト溶融処理技術の確立に期待

■ 概 要 ■
独立行政法人 産業技術総合研究所【理事長 野間口 有】(以下「産総研」という)電子光技術研究部門【研究部門長 原市 聡】池田 伸一 主任研究員、梅山 規男 テクニカルスタッフは、大成建設株式会社【代表取締役社長 山内 隆司】(以下「大成建設」という)技術センター【執行役員技術センター長 辻田 修】森 直樹 次長、万字 角英 課長代理らと共同で、オンサイト溶融処理システムによる溶融処理を、実際のアスベスト廃棄物を用いて実証することに成功した。
この技術は、ハロゲンランプの光源と回転楕円型の反射鏡による集光加熱技術、アスベスト廃棄物成形技術をそれぞれ開発し、システム化したもので、アスベストの剥離・除去現場などオンサイトで無害化を目的とした溶融処理を行うことができる。開発したオンサイト溶融処理システムを用いて、実際のアスベスト廃棄物(飛散性吹付材:クリソタイル含有)の溶融処理を行い、処理後の廃棄物にはアスベストが含まれていないことを透過型電子顕微鏡観察により実証した。これにより、これまで困難と考えられてきた、アスベスト廃棄物のオンサイト溶融処理技術の確立が期待される。

     は【用語の説明】参照

 
図1 集光加熱によってアスベスト廃棄物が溶ける様子

■ 開発の社会的背景 ■
アスベスト廃棄物の溶融無害化処理は拠点集中型の大型施設で行われているが、飛散性アスベスト廃棄物約4万tのうちわずか9 %程度(平成21年度実績)しか処理できず、ほとんどのアスベスト廃棄物は、二重梱包で袋詰めにされ、管理型処分場で埋め立て処分されている。このような従来の飛散性アスベスト廃棄物処理では、拠点集中型大型施設や管理型処分場に運搬する際の飛散リスク、埋め立て処分後の破袋による飛散リスク、新規の管理型埋め立て処分場の建設が容易でないことなどから、飛散性アスベストの剥離・除去を行う空間でのオンサイト溶融無害化処理技術が大いに期待されている。しかし、アスベストの剥離・除去を行う空間でアスベスト廃棄物を溶融するために必要な1500℃程度の高温で、現実的な量の溶融処理を行う技術はまだ実用化されていない。
さらに、グリーンイノベーションの推進においては必要最小限のエネルギー消費が要求されるが、従来型の拠点集中型大型施設では、省エネルギー化をこれ以上追求できる余地がほとんど残されていなかった。

■ 研究の経緯 ■
産総研は、旧工業技術院 電子技術総合研究所の時代から無機材料の単結晶成長技術や新材料の研究開発を行ってきた。開発した材料の物性研究だけでなく、材料作製のための装置開発や応用技術開発も進めており、小型で2000℃の高温が得られる集光型結晶成長炉を開発している(2004年2月17日産総研プレスリリース)。さらにその技術を応用し、アスベストを集光加熱によって溶融させ無害化処理できることを確認している(2008年1月23日産総研プレスリリース)。一方、大成建設では、飛散性アスベストの剥離・除去に関して、安全な無人化作業のための技術開発を精力的に進めてきた。
なお、本研究開発の一部は、独立行政法人 新エネルギー・産業技術総合開発機構の助成事業である、平成20年度第2回イノベーション推進事業(大学発事業創出実用化研究開発事業)(平成20〜21年度)「工事現場でのオンサイト式非アスベスト化処理システムの開発」(大成建設との共同研究)による支援を受けて行った。また、本実証試験は、地方自治体の廃棄物対策担当課および労働局の許可を得て行った。

■ 研究の内容 ■
今回、ハロゲンランプを光源とし回転楕円型の反射鏡を用いた集光加熱技術と、アスベスト廃棄物成形技術をそれぞれ開発し、システム化することによって、オンサイト溶融処理システムの開発に至った。また、大成建設では本研究開発とは別に、ロボットなどによる壁・柱・天井などからの飛散性アスベストの剥離技術開発が進められており、従来からの作業者の手による剥離に加え、新しい技術であるロボットなどによる作業で剥離し、集められた飛散性アスベスト廃棄物を対象に、その現場での溶融無害化処理技術開発を目指している。図2に、飛散性アスベスト廃棄物のオンサイト溶融処理で想定される作業の概要を示す。

 
図2 オンサイト式飛散性アスベスト溶融処理フローとアスベスト廃棄物形状の推移

 飛散性アスベストを剥離する場合は、アスベストが外に漏洩しないよう作業場所を隔離し、内部を負圧に保つ必要がある。今回開発したシステムも同様に隔離負圧空間内に設置した。現場で剥離・除去された飛散性アスベスト廃棄物は一カ所に集め、開発した成形システムによって、粉砕、添加剤との混合、押出成形を行う(図3)。棒状成形物は、一定時間養生した後、開発したオンサイト型集光加熱溶融装置に図4のように取り付け、最高1500℃程度になる装置内部の炉に向かって降下させ、成形物下端から溶融処理を行う。

 
図3 棒状に成形した後の吹付アスベスト廃棄物
 
図4 吹付アスベスト成形物を炉に投入する様子

 集光加熱溶融装置は図5のようにハロゲンランプと金メッキされた反射鏡からなる装置で、局所的に非接触で加熱できることが特徴である。図6に示すように、飛散性アスベスト廃棄物の棒状成形物の下端は、十分溶融し液体となって重力によって落下する。十分溶融しているため、成形物中に存在していたアスベストの繊維状形態を消失できていると考えられる。落下した試料(図7)を透過型電子顕微鏡を用いて観察した結果、アスベストの繊維状形態は確認されず、今回開発したシステムによって、実際のアスベスト廃棄物中のアスベスト繊維を消失できたことが確認できた。

 
図5  集光加熱用の反射鏡と溶融処理用石英管
 
図6 集光加熱によってアスベスト廃棄物が溶ける様子 図7 溶融落下したアスベスト廃棄物

■ 今後の予定 ■
今後、アスベストの溶融処理速度などをさらに改善し、実用化のための実証試験を行っていく予定である。

【用語の説明】

◆オンサイト
壁や天井などに吹き付けられている飛散性アスベストを剥離する現場を指す。

◆アスベスト廃棄物
微細な繊維状形態を持つ天然鉱物であるアスベスト(複数の鉱物の総称)を含む、吹付材、スレート板、屋根材、断熱材に使用された廃棄物。アスベスト廃棄物には飛散性と非飛散性の2種類があり、壁や天井などに吹き付けられているアスベスト含有材料は飛散性アスベストに分類される。平成18年の石綿障害予防規則改正以前は、重量比で1 %以上含むものが規制の対象であり、その規制を前提とした国内の飛散性アスベスト廃棄物の国内残存量は100万t弱である。平成18年9月以降は、重量比で0.1 %以上含むものが規制の対象となっており、国内で処理する必要がある飛散性アスベスト廃棄物の残量は、正確な見積もりはないが、少なくとも数百万tと見込まれる。

◆クリソタイル
複数あるアスベストの中で最も大量に、国内で最後まで使用されていた鉱物。融点はアスベストの中で最も高い(約1500℃)。毒性は、他のアスベストであるクロシドライトやアモサイトに比べて、弱いといわれている。

■ 問合せ先 ■
独立行政法人 産業技術総合研究所 広報部 報道室
TEL:029-862-6216

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