2001年10月18日
 
鹿島建設株式会社
大成建設株式会社
清水建設株式会社
  

事務所ビルを対象とした火災安全
設計データベース構築に関する研究

―大手ゼネコン三社による共同研究開発成果の第二弾―


 鹿島(社長:梅田貞夫)、大成建設(社長:葉山莞児)、清水建設(社長:野村哲也)の三社は、研究資源の有効利用の観点から、「耐震」、「防災」、「風技術」の3つの研究テーマについて1999年4月から共同で研究を推進してきました。
 このたび、「防災」分野(火災安全)の研究テーマ「事務所ビルを対象とした火災安全設計データベース構築」の成果がまとまりました。今後、三社はこの研究成果を、昨年6月から建築基準法の火災安全規定に導入された性能規定型設計に役立てていく考えです。

【背 景】
 研究の動機付けとなった建築基準法改正のポイントは、建物の用途、規模、高さから一律に安全対策を決定する方法から、個別建物ごとに安全対策を選択することが可能になったことです。すなわち、設計対象空間における火災の性質や状態を建築的な条件(建築空間の規模、開口部条件、天井高さ、内装材料の種類など)と空間に配置される可燃物の燃焼特性から想定し、用意された火災安全対策が満足できるものか否かを確認する方法となりました。
 しかしながら、現状の可燃物の燃焼特性データは不十分であり、より実態的な設計データの整備が社会的に要請されています。
 

建築基準法改正のポイントと三社共研の関係
 
 
 
 また、消防法においても火災発見や消火など各種消防対策の設置基準に関して性能規定化のための検討が消防庁で進められており、この研究成果の活用範囲はさらに増加することが見込まれます。
 
 鹿島・大成建設・清水建設の三社は、業界のリーダーとしてこの動向を先取りし、国や学会などに先行して「事務所空間を対象とした火災安全設計用データベース構築研究」に1999年4月より共同で着手し、今般2年間の研究結果をまとめました。
 
【三社共同研究の効果】
 火災安全研究分野は、国内外共に構造・環境・材料分野に比べて極めて研究者が少ない分野です。今回の三社共同研究では、各社の保有技術を効果的に組み合わせての相乗効果により、研究費用並びに人的パワーの削減ができ、短時間で所期の成果を挙げることができました。
 また、研究の過程では、外部研究機関【東京理科大学火災科学研究所、自治省消防研究所(現独立行政法人消防研究所)、能美防災(株)、ホーチキ(株)】の協力も得られました。
 
【研究成果】
 三社の研究成果である火災安全設計データベースは、次の3点から構成されます。
(1) 事務所ビルの可燃物の実態データ
(東京理科大学火災科学研究所へ一部委託)
 性能設計の基盤として、オフィス空間における可燃性物品の種類・配置・重量などの実態調査を実施しました。
 その結果、最近のオフィスビルにおける可燃物の特徴として、パソコンやローパーティションなどが普及していること、ならびにプラスチック系の可燃物が増大していることがわかりました。
   
(2) 代表的な可燃性家具等の単体燃焼特性データ
(東京理科大学火災科学研究所へ一部委託)
 (1)の実態調査に基づき、オフィス内の代表的な可燃物を選択し、パソコン、パーティション、机、椅子などの単体燃焼実験により発熱速度や燃焼拡大状況を把握しました。
   
(3) 配置パターンの燃焼特性、スプリンクラー火災抑制効果データ
(現独立行政法人消防研究所、能美防災(株)、ホーチキ(株)との共同実験)
 (1)の実態調査に基づき、オフィス内の代表的な配置パターンを再現しました。その後、ゴミ箱からの火災を想定し、机4つへどのように燃え移るかについて燃焼実験をおこない、発熱速度や燃焼拡大状況を把握しました。
 さらに、水量を変えたスプリンクラー散水実験も実施し、スプリンクラーの火災抑止効果についてもデータを収集しました。

独立行政法人消防研究所 撮影
 
【研究結果から】
 今回収集したデータから、以下のようなことがわかりました。
初期火災安全設計には、可燃物の量や表面積に加え、パソコンなどのプラスチック系可燃物の多寡、机周辺の配置パターンが大きく影響する。
   
現行水量のスプリンクラーの火災抑制能力は、机4つ分程度の範囲である。また、スプリンクラーを作動させた場合、1Mw程度の発熱状況(椅子が勢いよく燃えている状況に相当)が、1/5程度に抑制できる可能性がある。
 
 つまり、机などの配置状況など可燃物に関するデータをベースにその燃焼状況に呼応したスプリンクラーを適切に配備すれば、火災は出火場所にとどまる、いわゆる局所火災(ぼや)で抑制される可能性が極めて大きくなることが判明しました。
 
【今後の展望】
 鹿島、大成建設、清水建設の三社は、それぞれが共同研究で得られたデータをオフィスビルの火災安全設計に活用し、安全かつ合理的な建物設計の提案を行なう考えです。
 また、改正建築基準法でも、スプリンクラーの有効性に基づく性能設計は見送られているため、三社は国内外の関連学会などへ積極的な働きかけを行い、これらを案件に適用して改正建築基準法におけるルートC(大臣認定による高度な性能設計)の認定を取得する考えです。これにより、火災感知や初期消火の設備(ハード)と可燃物管理や金銭的な保証の体制など(ソフト)を組み合わせたさまざまな合理的な安全対策の出現が期待できます。そのために社団法人建築研究振興協会に、2002年3月末までにこれらの研究成果を性能規定型建築基準法におけるルートCの設計資料として活用するための適用範囲や要件の提示について研究委託しました。
 
 なお、三社は99年4月から、建設分野の特定基礎技術の3テーマ(「耐震」、「防災」、「風技術」)について、共同研究を進めてきましたが、これらは三社の包括的な技術提携という位置付けではありません。今回は、このうち「防災」に関する研究開発成果の発表です。