ビルの「地震リスク」をパソコンで簡単評価

―予測される地震被害を金額で表示する?一般向けソフト?を開発―
 
【平成11年6月10日】大成建設株式会社


 大成建設(株)(社長・平島 治)と(株)篠塚研究所(社長・篠塚正宣、東京都新宿区)は共同で、オフィスビルの「地震リスク」を簡易に評価できるプログラムを開発しました。
 従来は「地震リスク」の評価に1ヵ月程度を要していましたが、今回の開発によって、専門家でなくてもパソコンで数分のうちに"予測される地震被害額"の形で簡単に評価結果が得られるようになりました。建物の設計時における重要な要素である「地震リスク評価」が広く普及することを目的として、本年秋頃に価格10万円程度で販売していく予定です。  

 今まで通常の建物を設計する場合に、耐震性能のグレードと地震リスクの関係を定量的に評価する一般的なツールはありませんでした。また本格的に地震リスク評価を行なうにはかなりの時間と費用がかかります。
 当社と篠塚研究所は、1990年より「地震リスクマネジメント(SRM)」による地震防災の最適投資計画の研究やサービスを協力して行なってきており、地震リスク評価手法に関するコンサルティング業務についても損害保険会社などを顧客として国内において先駆的に手がけてきました。こうした実績で蓄積された両社のノウハウによって初めて標準化されたプログラムが実現しました。

 本プログラムは、地震防災分野の世界的権威である南カリフォルニア大学の篠塚正宣教授の信頼性工学に基づく研究実績と当社の地震被害に関する多くの現地調査の結果がデータベース化されて組み込まれています。これに基づいて適切な数値があらかじめ設定されていますので、入力項目は全部で約50項目ありますが、構造の専門家でない人でも都道府県名など数項目を入力するだけの2〜3分で計算結果が得られます。もちろん専門家が利用する場合には、ユーザーが自分の知識や経験に基づき必要な数値を入力することができます。
 計算結果は、耐震構造や免震構造など複数の耐震性能別比較の形で、13のアウトプット(情報)をグラフ形式でビジュアルに提供します。例えば、(1)耐震性能のグレードと地震リスクとの関係、(2)建物損失額と営業損失額の比較、(3)建物のライフサイクルコストにおける地震リスクの割合、(4)兵庫県南部地震など特定の地震に当てはめた場合の被害予測額、などです。


 現在、建築分野において設計手法は性能設計へ移行しつつあります。従って、発生が不確実な地震に対する建物の性能については、本プログラムが提供する評価データを用いることによって設備投資の費用対効果が定量的に判断できるので、発注者の要求に合わせた効果的グレードの選択が可能です。また専門家でない人にとっても、確率論による"予測される地震被害額"として金額表示されるので、その性能グレードを容易に理解することができます。

 本プログラムの主なユーザーとしては、設計事務所や中堅建設会社、損害保険会社及び不動産会社などが考えられます。今後は不動産の取引や証券化などでニーズが高まってきている"建物の格付"への活用も視野に入れて展開していくつもりです。今回のオフィスビル版に引き続いて、マンション版、既存建物版を開発中です。



〔参考〕
『地震リスク』;
 リスクとは「発生が確実に予測できず、発生すれば損失が伴う事態」と考えられます。まれにしか発生しない地震の程度と頻度をいかに想定するかは難しい課題です。また地震による損失の算定は建物や設備機器の損害だけではなく、操業停止による営業損失や電気・水道等のインフラ施設停止による影響その他関連する様々な被害要因を考慮する必要があります。企業や自治体によっても地震の時に重点的に守るべきものが異なり、被害の種類や損失額が違ってきます。このような各種の要因を含む「地震リスク」を確率論で科学的に統合・計算し、将来の"予測される被害額"として定義しました。