週刊誌コラム

週刊新潮「タワークレーン」

道具街 金ぴか 河太郎

 商売用から家庭用まで台所用品なら何でもそろう、浅草の「かっぱ橋道具街」の中に、金ぴかのカッパ像が商売繁盛のシンボルとして街を見守 っているのをご存じだろうか。

 かっぱ橋は本来「合羽橋」と書き、昭和の初めまで道具街の中央を流れていた新堀川に架かっていた。今、道具街中ほどの交差点名や、そこを 東西に貫く合羽橋本通りに、その名を残している。

 つまり、橋名は架空の動物のカッパではなく雨具の合羽だが、同音の関係のためかカッパ伝説が生まれた。十九世紀初頭の文化年間、合羽屋喜 八・通称合羽川太郎が私財を投じて新堀川の改修工事をしたとき、以前彼に命を救われたカッパが工事を助けたというものである。

 合羽橋本通りにある曹源寺には河童大明神が祀られていて、同寺は通称を「かっぱ寺」といわれている。もっとも、これには異説がある。

 道具街北方の台東区立金竜小学校の辺りにあった伊予(愛媛県)新谷藩主加藤家の下屋敷に住む家臣たちが内職に作った雨合羽をいつも近くの 橋で乾かしていた。このため、橋はいつしか合羽橋と呼ばれるようになったという。

 しごく現実的な話で、このほうが本当と思われるが、話としてはカッパが出てくるほうが面白い。道具街の人たちもそう考えたのだろう。平成 十五年、合羽橋道具街誕生九十年を記念して東京合羽橋商店街振興組合名で、新しく金色の「かっぱ河太郎像」を造立した。

 今、合羽橋交差点の南西の一画に「商売繁盛かっぱ河太郎」と染め抜かれた赤や紺色の幟に囲まれ、身長一・五メートルほどの河太郎が右手に 釣り竿、左手にコイを抱えて自然石の上に立っている。竿もコイももちろん金色である。道具街にお出かけの際は、一見をお薦めしたい。

(掲載号:03月12日号)