週刊誌コラム
週刊新潮「タワークレーン」
名人 圓朝 止め名
日本画家の
両膝を揃えて座布団に座り、両手で大きな湯呑みを支えるようにして口もとに運んでいる。圓朝の左脇に高い燭台があり、蝋燭の赤い炎がまっすぐ上に伸びている。風がなく、室内の空気がピンと張りつめていることがわかる。
鏑木清方の父、
関根黙庵著『講談落語今昔譚』(東洋文庫)に興味深いエピソードがある。
圓朝の人気は絶大で、圓朝が高座に上ると客席の後ろが二分通り空いた。客が帰ったのではなく、客の多くが少しでも高座に近づこうと自然に「お膝送り」(畳敷きの客席で、少しずつ詰めあう客席用語)していたからだという。
明治十七年、速記法研究会を創立した
蔵
鏑木清方の圓朝像には、落語の名人に加えて、傑出した文人の風格が漂っている。圓朝は、元老の井上馨、元日銀総裁の川田小一郎、三井物産の馬越恭平、旧幕臣の山岡鉄舟らと、芸人ではなく友人の交わりを持ったという。
圓朝の名称は落語界で襲名を禁ずる「
(掲載号:09月25日号)
