週刊誌コラム

週刊新潮「タワークレーン」

淡島堂 針供養 銭塚地蔵

 浅草観音・浅草寺境内の西端に建っている淡島堂は元禄(一六八八−一七〇三)のころの創建という。今の淡島堂は平成七年に旧影向堂を改修したものだが、ここが昭和三十年まで戦災に遭った浅草寺本堂の代わりを務めた仮本堂だったことを知る人も少なくなっただろう。

 堂内には、本尊の阿弥陀如来像と並んで虚空蔵(こくうぞう)菩薩像が安置されている。同菩薩は日本神話に大国主命(おおくにぬしのみこと)と共に国土経営に当たった少彦名命(すくなひこなのみこと)本地(ほんぢ)、つまり本体とされていて、和歌山県和歌山市加太の加太神社からの勧請と伝えられている。

  色さめし針山並ぶ針供養   高浜虚子

 ここの行事では、毎年二月八日に行われる針供養が知られている。当日は使い古したり、折れた針を豆腐に刺して日ごろの針の働きに感謝するため多くの女性が訪れる。

 この淡島堂の北側には、商売繁盛にご利益があるというその名も銭塚(ぜにづか)地蔵というお地蔵さんがいらっしゃる。四角い石塔の上に安置されている石の六地蔵で、石塔の下に寛永通宝が埋めてあるということから、その名が付いた。

 江戸時代の中ごろ摂州有馬(兵庫県)のある人妻が、庭先で寛永通宝が詰まった壺を掘り当てた。大喜びの彼女だったが、これに頼って怠けたら家は滅びると壺を埋め戻した。以来、一家は繁栄して妻は壺の上に地蔵尊を祀った。

 このお地蔵さんを勧請したのが銭塚地蔵で、参拝者はお清めの塩を供えることになっていて「塩なめ地蔵」とも呼ばれている。

 堂に向かって右側には、石の塊が祀られている。原形をとどめていないが「カンカン地蔵」という名前で、お参りする人が像を小石でカンカンと削ってその粉を財布にすりつけると金が貯まるとの言い伝えがある。

(掲載号:06月19日号)