週刊誌コラム
週刊新潮「タワークレーン」
外苑名物 なんじゃ もんじゃ
かつて、武蔵野は広く遠く霞む草原だったらしい。
明治四十年に東京市役所が編纂した『東京案内』では、四谷区(現・新宿区)の名所古跡の一つに
神宮外苑の国立競技場を出てJR中央線信濃町駅方向に歩くと絵画館前の芝生内に一本の松があり、「御鷹の松」の案内板が立っている。これが「遊女の松」の二代目で、通称「御鷹の松」なのである。
今は都心の四谷に霞村の名もあった。嘘のような話だが、千代田区の霞ヶ関にも似たような地名由来がある。ただ、麻布の
神宮外苑は、明治時代の青山錬兵場を主体に、大正三年、建設計画がまとまった。敷地は約三〇万平方メートル。標高三五メートル、一帯がほとんど平坦な台地を形成する。つまり、整然と続くイチョウ並木がとりわけ引き立つ地形なのである。
絵画館前に、もう一本、外苑名物の樹木がある。もともと江戸時代からあった木で、五月の初めころ、白い清楚な花を咲かせ、満開になると雪を被ったように見える。地元では俗に「なんじゃもんじゃの木」と親しまれた。
明治三十六年、植物学の白井光太郎東大教授の調査で、モクセイ科のヒトツバタゴとわかった。中部地方の数か所と九州の対馬に隔離分布する珍木なので天然記念物に指定された。残念ながら昭和八年に枯死、現存するのは根分けした二代目である。
(掲載号:04月19日号)
