週刊誌コラム
週刊新潮「タワークレーン」
永井荷風と 市ヶ谷八幡 外濠の眺め
永井荷風は大正四年に随筆『
〈市ヶ谷八幡の桜早くも散って、茶の木稲荷の茶の木の
荷風は、東京に都会美なるものがあるとすれば、それは樹木と水辺に他ならないと繰り返している。そして、外濠近辺の景観を「東京中での最も美しい景色」と絶賛する。荷風は小石川
市ヶ谷八幡(新宿区市谷八幡町一五)は、江戸城を本拠とした太田道灌が文明十年(一四七八)に鎌倉鶴岡八幡を勧請したのが始まりである。道灌は鶴岡にあやかって
濠端から五十段の石段を登ると、文化元年(一八〇四)建立の銅の鳥居(新宿区指定文化財)が厳かな緑青色で聳えている。市ヶ谷八幡には太田道灌が奉納したと伝えられる竹製の軍配団扇(区登録文化財)も秘蔵されている。
残念なことだが、濠端に沿ってビルが建ち並んでいるため、荷風が絶賛した外濠は、銅の鳥居から石階と参道を見下ろして、わずかに望めるだけである。
(掲載号:05月18日号)
