週刊誌コラム

週刊新潮「タワークレーン」

祖師谷 伝説の 釣鐘池

 東京・世田谷区の祖師谷(そしがや)に伝説の釣鐘池(つりがねいけ)がある。

 昔、暑い日差しが照り続ける夏のことだった。一粒の雨もないため、田畑は乾き、作物は干上がりそうになった。農民たちは必死で神仏に雨乞い行事をしたが、日照りは続いた。祖師谷にあった古い寺の和尚は、ある夜、意を決して釣鐘といっしょに池に沈んだ。次の日から雨が降り、慈雨に救われた農民たちは、この池を釣鐘池と呼んだ。

 釣鐘池はいまも世田谷区祖師谷5-33にあり、区立つりがね池公園になっている。

 公園は小田急線の祖師ヶ谷大蔵(そしがやおおくら)駅から歩いて15分ほどのところにある。駅を出て商店街をまっすぐ北に進む。雑踏の商店街の途中に数十mのサクラ並木があり、「ふれあい遊歩道」と名づけられている。

 釣鐘池へ行くには、さらに北に直進し、祖師谷5-29先で西へ折れる。しばらくすると、道がしだいに下り坂になり、低地に向かっていることがわかる。300mほど歩くと成城学園哲士寮の空地に出る。ここを左に入ったところが釣鐘池の公園である。

 池は細長い瓢箪型で、周囲を柳、桜、欅、楠などの樹木が覆っている。しかし、釣鐘を呑み込むほどの深さや大きさは失っている。傍らに区教委の説明板がある。

 <釣鐘池は、標高凡そ45mの武蔵野台地に囲まれ、昔は深い自然林に覆われていて、野川(のがわ)の一支流である西方の仙川(せんがわ)に注ぐ豊富湧水池であった。台地上には、この水を求めたであろう古代の人たちの遺跡である縄文時代中期の住居跡が昭和52年(1977)の区教委の発掘調査によって確認されている>

 中央に太鼓橋があり、弁天様を祭る朱塗りのお宮があった。説明に<毎年4月7日には、今も弁天祭が行われている>とあった。

(掲載号:09月09日号)