週刊誌コラム

週刊新潮「タワークレーン」

けこぼ坂 天祖神社 伊勢脇

 東横線・東京メトロの中目黒駅南の駒沢通りは、祐天寺方面へ向かってゆるやかな上り坂になっていて、「けこぼ坂」と呼ばれている。

 昔は急坂だったのを、改修工事を繰り返して今のような道路にした。その折り、坂の両側から土の塊がざらざらこぼれて道幅を狭めることがあった。この状態を目黒の古い方言で「けこぼ」といい、それが坂の名になった。

 坂をほぼ上りきると、右手に天祖神社の参道が見える。参道に続く境内には何本ものイチョウやケヤキの大木がそびえていて、目黒区の保存樹林となっている。

 神社の創建年代は不明だが、境内の樹木から見てかなり古い歴史があると推定されている。現在の社殿は昭和8年の造営で、祀られているのは伊勢神宮内宮の祭神と同じ天照大神(あまてらすおおみかみ)である。このため、昔は樹木の茂る境内を「お伊勢の森」と呼んだ。

 さらに、神社の周辺、現在の上目黒2丁目を中心とする一体を「伊勢(わき)」といい、これが字名にもなっていた。昭和7年の目黒区誕生によってこの地名はなくなったが、現在も町会名や神社裏の公園の名として使われている。

 神社の境内には、江戸時代の庚申塔が2基並べて保存されている。

 宝永5年(1708)の銘がある塔には、講中九人の名が刻まれている。もう1つの享保年間(1716-35)製作と推定されるものは、道標を兼ねていて元は神社前の道にあった。「これより町さき四辻、大道、九品仏道、右せたがい道、左ふどう道」と彫ってある。「せたがい」は世田谷、「ふどう」は目黒不動のことである。

 毎年9月の祭りに担がれる神輿は上から下まで全面に木彫が施されている豪華なもので、ガラス越しに見ることができる。

(掲載号:09月30日号)