週刊誌コラム
週刊新潮「タワークレーン」
内村鑑三 ゆかりの 聖書講堂
東急東横線都立大学駅から目黒通りを南西へ7、8分ほど行った先の南の裏通り、目黒区中根1-14-9に「今井館聖書講堂」と書かれた額の掛かった古めかしい木造平屋の建物が建っている。
無教会主義キリスト教の創始者・内村鑑三(1861-1930)ゆかりの建物である。そう聞くと、ただ保存されているだけの建物と思われがちだが、れっきとした現役の講堂でもある。
「2つのJ」、つまり日本とイエスに仕えることを念願とした内村は、「万朝報」の新聞記者時代に日露戦争に反対して非戦論を主張、同社を退社した。やがて雑誌『聖書之研究』で平和を説くようになり、この雑誌と研究会活動で多くの人の支持を得るようになった。
明治41年(1908)内村の弟子で香料商の今井樟太郎という人が、豊多摩郡淀橋町柏木919番地、現在の新宿区北新宿3丁目に木造50坪の講義用の建物を建てて内村に寄贈した。彼はここで、その死まで聖書の講義を続けた。
講堂は建設当時から内村の門下生が「今井館」と呼んでいて、それがいつしか正式名称になった。内村の死後も門下生の活動拠点だったが、昭和10年、道路拡張のため移転を余儀なくされた。
移転先探しの結果、当時は竹藪だったという現在地に移された。この中根の今井館では、東大学長を務めた矢内原忠雄さんも聖書講義を続けた一人だった。
現在は「今井館教友会」というNPO法人によって、建物の維持、管理、運営が行われており、講堂ではキリスト教関係の催しや集会が行われている。また、すぐ隣に新設された図書館には『聖書之研究』を始め内村に関する雑誌や図書が収集され、公開されている。
(掲載号:11月18日号)
