週刊誌コラム

週刊新潮「タワークレーン」

うっそう 林試の森 石古坂

 目黒不動門前を南西へ5分ほど歩くと、うっそうと樹木の茂る「都立林試の森公園」が静かなたたずまいを見せている。林試とは林業試験場の略称で、国の林業試験場跡地の公園である。

 現在の目黒区下目黒と品川区小山台にわたるこの地には明治33年、目黒試験苗圃が開設され、10年後に林業試験場となった。12haにも及ぶ広大な試験場にはさまざまな樹木が植えられ、育成研究が行われてきた。

 昭和53年、その林業試験場が筑波研究学園都市へ移転した。跡地は都の所有となって公園として整備され、平成4年6月、全面開園の運びとなった。

 元が元だけに、樹木の種類が豊富である。植物・野鳥・昆虫の観察はもちろん、大木も生えていて起伏の多い園内を散策しながらの森林浴も十分に楽しめる。

 木々にはそれぞれ日本産・外国産の珍しい樹木、虫の集まる樹木、くらしに役立つ樹木などと区分けしたマークと説明が付いている。滑り台などすべて木製の遊具が備えてある子供用の冒険広場もある。

 広い公園だけに周囲に10個所もの門があるが、正門は目黒不動に近い東門になる。この門の前は南への上り坂になっていて「 石古 ( いしこ 坂」と呼ばれている。

 品川方面から目黒不動へ参詣する際の道筋で、昔は石ころの多い坂だったので、そう名付けられたというのが一説。もう1つは、坂下にあった小川・石河の名から石河坂といっていたのが石古坂に転じたとする説である。

 天保9年(1838)刊行の『東都歳時記』「梅」の項に立春から34,5日目の見どころの1つとして「目黒石古坂(不動尊脇也)」とある。今、その面影はないが、代わりに緑豊かな林試の森が広がっている。

(掲載号:12月23日号)