週刊誌コラム
週刊新潮「タワークレーン」
青空と緑に 窓を開いた 世田谷美術館
天気が好ければ、東急田園都市線用賀駅から歩くのがいい。都立砧 公園のなかにある世田谷区立の世田谷美術館までは、徒歩15分から20分ほどである。
用賀駅から砧公園に通じる用賀プロムナードには、路面に百人一首の名歌が一首ずつ刻まれている。傍らには清流の水路があり、両側の並木は春には桜のトンネルをつくり、秋には紅葉で染まる。
世田谷美術館に向かう標識に従って、プロムナードから環八通り(環状8号線)へ出ると目の前に砧公園の緑が広がる。森の上の青空に、ニョッキリ高さ100メートルの煙突が頭を出している。世田谷清掃工場の煙突で、青とグレーの雲形を浮かべている。これが美術館への目印でもある。
世田谷美術館は、昭和61年に開館した。設計は内井昭蔵で、この作品で毎日芸術賞を受けている。日比谷公園の2倍もあるという砧公園のなかで、自然に溶け込んだ設計が評価されたのである。
こんなエピソードがある。昭和55年のことだが、マイタウン東京を謳い文句にした鈴木俊一都知事が砧公園を視察に訪れたさい、大場啓二区長が訴えた。「上野に匹敵する美術館が山手線の外側にも必要ではありませんか」。都知事も頷いて「うん、そうだな」。都立公園のなかに区立美術館が建設されるという異例の計画がこれから動き始めたという。
内井昭蔵の設計は、青空と緑に開かれた公園美術館というコンセプトで一貫している。背の低い2階建ての建築は巨木の陰に隠れるようだが、展示室やホール、市民教室、レストランなどの諸施設は中世風の回廊で結ばれて、ゆったりと波のひろがるように展開する。とりわけ外観を引き立たせているのが、緑青( 銅版で葺かれた屋根で、周囲の緑と調和して美しい。
用賀駅から砧公園に通じる用賀プロムナードには、路面に百人一首の名歌が一首ずつ刻まれている。傍らには清流の水路があり、両側の並木は春には桜のトンネルをつくり、秋には紅葉で染まる。
世田谷美術館に向かう標識に従って、プロムナードから環八通り(環状8号線)へ出ると目の前に砧公園の緑が広がる。森の上の青空に、ニョッキリ高さ100メートルの煙突が頭を出している。世田谷清掃工場の煙突で、青とグレーの雲形を浮かべている。これが美術館への目印でもある。
世田谷美術館は、昭和61年に開館した。設計は内井昭蔵で、この作品で毎日芸術賞を受けている。日比谷公園の2倍もあるという砧公園のなかで、自然に溶け込んだ設計が評価されたのである。
こんなエピソードがある。昭和55年のことだが、マイタウン東京を謳い文句にした鈴木俊一都知事が砧公園を視察に訪れたさい、大場啓二区長が訴えた。「上野に匹敵する美術館が山手線の外側にも必要ではありませんか」。都知事も頷いて「うん、そうだな」。都立公園のなかに区立美術館が建設されるという異例の計画がこれから動き始めたという。
内井昭蔵の設計は、青空と緑に開かれた公園美術館というコンセプトで一貫している。背の低い2階建ての建築は巨木の陰に隠れるようだが、展示室やホール、市民教室、レストランなどの諸施設は中世風の回廊で結ばれて、ゆったりと波のひろがるように展開する。とりわけ外観を引き立たせているのが、
(掲載号:06月19日号)
